大いなる分度器鳥の渡りかな 美鳥
である。ブログタイトルにした「師の落葉かなカサと舞ひコソと鳴り」句には、
林翔先生に〈カサてふ落葉コソてふ落葉色たがへ〉の句もあれば
の前書が付されている。また、著者「あとがき」には、
二年余り前、長年の体調不良に対してこれまた長い病名が付き、外出が不自由に。大仰に言えば人生の仕切り直しです。健康であった半生とこの先の自分の間に一線を引きとにもかくにも前へ進まねばと思い至ったときに俳句がありました。
とあった。そして、相子智恵は、
〈前略〉美鳥さんの句は題材も表現も幅広い。その幅広さは、常に自分の外側と内側の世界に対して心を澄まし流転の中で明滅する一回性の光を、あるいはその光によって生まれる影を、貪欲に書き留めようとする真摯な俳人の詩的な営みによるものだと、私は思う。
と、友愛深く述べている。愚生の感銘の一句は、
親しきよ冬木となつてよりの樅
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
まんなかに母在る幸や雑煮吹く
詩を捨てし父より知らず雪兎
けふの木の芽あすの木の芽と湧きにけり
某(それがし)と某(なにがし)同字秋暑し
ずれがちの眼鏡憲法記念の日
福藁や日は産土へ廻り来る
虹の根を発ちたる電車濡れてをり
復刻本に奥付ふたつ夜の薄暑
日の丸に十字の折目文化の日
井原美鳥(いはら・みどり) 1949年夕張市生まれ。
撮影・葛城綾呂 さば雲↑
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