2018年11月19日月曜日
久保純夫「亀鳴くに孤立無援のすめらぎ」(「儒艮」VOL.26より)・・
「儒艮」26号(儒艮の会)の特集は先般刊行された久保純夫句集『HIDAWAY』。歌人・天草季紅、柳人・樋口由紀子、俳人・瀧澤和治など10名の各30句選である。後記に「いろいろな方々に30句選をお願いしました。わくわくしています。『選は人なり』という言葉をかみしめています」とある。句数が多い句集だったこともあるが、多彩な句作りであり、どのようにでも書ける世界が久保純夫にあるということであろうか。この十名による30句選でもなかなか重ならなかったことが「選は人なり」の言になっていよう。それが面白い、ということに繋がっているからだろう(それ以外はほとんど重複しないか、せいせい1~2句どまり)。ざっと見で、間違っていたらごめんなさい、であるが、10名中3名の選が重なったのが以下の句である。
白桃のこの世の影を作りけり 純夫
悪くない、なかなかの味わいだと思う。だが、裏を返せば、とりわけ突出した感銘を読者に喚起する句が他になかったのではないか、ともいえる。あるいは,どの句でもある水準、表現レベルを確保されているという証であろうか。興味を惹いた選句は、新井美孝選「中学国語俳句教材の観点を基準とする」である。不明にして愚生はどんな基準か知らないけれど、基準が個人的感懐?ではない所に、姿の美しい、正しい俳句の姿をした句が選ばれていて、良い作品を選んでいる、と納得した。
ともあれ、招待作家の作品から一人一句をあげておきたい。今号の注目は、古稀を迎えた妹尾健が俳句表記の仮名遣いを、永田耕衣、橋閒石、安井浩司などと同じように現代仮名遣いに改めたことである。作品も好印象である。
「お話が・・・」つられて歩く帰り花 嵯峨根鈴子
コスモスのグラデーションを頬に引き 久保 彩
新鮮な傷口尾花ひらく前 岸本由香
何にでも紅生姜のせ勤労日 近江満里子
月見酒月があふれてしまいけり 上森敦代
卵黄の赤いところを囃すなり 曾根 毅
喉仏長き少年ついてくる 妹尾 健
鹿の眼が三千 戦起こらざる 木村オサム
断罪に使えそうなり扇風機 岡村知昭
火星接近トマト湯剥きにす 小林かんな
そうそう、追伸めくが、過日、大谷清・津のだとも子夫妻の個展の際に上京された土井英一には、電話で声だけになってしまったが、それでも、およそ半世紀ぶりに声を聞くことができた(愚生の都合で一目会えなかったのが残念)。その土井英一、本号「『四季の苑』漫遊(21)-鳥取氏弔魂來由」も名散文である。
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