2020年8月10日月曜日
谷山花猿「死ぬために穿く軍足に左右がない」(谷山花猿・1991年12月の書簡より)・・
谷山花猿(1932年~・奉天産まれ)は、いだったか杳として消息不明となった。旅先で倒れたといううわさもあったが、詳しいことは分からない。「俳句人」の編集長をされ、確か新俳句人連盟会長もされた時代もあった。
ブログタイトルにした句は、1991年12月に贈られてきた句集『資本』(手づくりの私家版・約60句所収)に挟まれていた書簡のものだ。愚生の事情で、また,少し本の整理をしたなかにあった。眠っていたのだ。昔、現代俳句協会の事務所に行くと必ず会えたし、多賀芳子の句会ではご一緒したこともあった。本名は伊牟田敏充で法政大学の教授をされていたが、愚生のお会いした頃は、月々の年金が余って使い道がないから、毎日、現俳協でボランティアだよとにこやかにしていた。その書簡には、他に二句が記されていた。
被爆待ち一頭でいるキリンの首 花猿(かえん)
国家機密です あなたが爆死する時間
また、便りのなかの戦争体験のアンケート回答のなかのQ&Aの一つには、
Q、いま、「戦争」をどのように俳句に詠めばいいと考えているか?
A、体験を基盤とした伝達性のある作品をねらうが、ゴタゴタと言い過ぎにならないようにしたい。そして、具体物(例えば、軍足)を使って「形」が眼に見えるように俳句を詠みたい。出来れば、想像の翼をはばたたかせて、未来の戦争の危機を詠んでみたい。なお、季語・定型に拘らず自由に詠み、戦争に関する無季の単語を「詩語」に高めることを試みたい。
また、大空襲・原爆などの体験がないので、写真・映画・原爆資料館などの遺品を深く観察して、具象的に俳句を詠めるように努力したい。いずれにしても、「戦争」を俳句に詠むことに積極的にチャレンジしていきたい。
とあった。その頃より、ほぼ30年が経っている。谷山花猿、もし存命ならば、88歳、米寿であるが・・。そういえば、今思うと、前歯が抜けていたせいか、実年令よりずいぶんふけて見えていたようだ。ともあれ、その時に贈られた句集『資本』からいくつかの句を以下に紹介したい。
子ヲ叱ル労働ガアリこか・こーら
昭和ノ子溺死スあいびーえむノ海
ロシアにて鼻付け替える資本かな
長い毛で縛り縛られ資本病
資本とは背骨食い折る鉛かな
肘張って資本の場所取りあそびかな
指切り首切り資本の愛はこれっきり
「跳んでみろ」と資本が腱を踏んでいる
資本に噛まれくすぐったがる筋もある
成吉思汗を黙って使う資本かな
声荒く大国日本の資本かな
撮影・鈴木純一「九日のかなかな送り麓まで」↑
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