「川柳スパイラル」第9号(編集発行人・小池正博)、本号の「ゲスト作品」は三田三郎。愚生にはなじみの薄い人である。小池正博「三田三郎の短歌と川柳」には、
三田三郎は前号にゲスト作品掲載の笹川諒と二人でネットプリント「MITASASA」を発行している。その内容は冊子「ぱんたれい」にまとめられているが、二人の出会いは葉ね文庫だったようだ。(中略)
私が三田三郎にはじめて会ったのも葉ね文庫だった。そのとき彼の歌集『もうっちょと生きる』(風詠社)を手に入れた。読んでみると川柳人の私にもおもしろいと思える歌が多かった。たとえば次のような作品である。
人類の二足歩行は偉大だと膝から崩れ落ちて気づいた
転ぶのは一つの自己というよりも七十億の他者たる私
本号のゲスト作品を以下に3句挙げておこう。
横手からトラウマを投げ込んでくる
あみだくじを辿った先に独居房
輪廻から取り除かれた金属片
ほかに、小池正博の「現代川柳入門以前 第六回」は「川柳における悪意」である。そこに攝津幸彦と中村冨二の句が引用されている。
死んでいる不幸な蛇をもつと打つ 幸彦
嫁ぐとや、蛇の卵を君が掌に 冨二
ともあれ、本号より同人の一人一句を以下に挙げておこう。
夜が明ける前に戻っておいで手足 悠とし子
鬼退治なんかこわくてできない会 石田柊馬
再稼働なまむぎなまごめなまたまご 浪越靖政
祖母の死後ある日の食器乾燥機 川合大祐
のたうってみせねばならぬ野外劇 一戸涼子
見つけてね河原の石のかげで待つ 小池正博
帽子屋の奥はからっと晴れている 湊 圭史
雨ごいは始まりました空を蹴る 清水かおり
それぞれの雨持ち寄って始発バス 畑 美樹
箱埋めて箱の芽が出るなら許せ 兵頭全郎
寛容(リベラル)な表現に要る修正ペン 飯島章友
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