栗林浩第2句集『SMALL ISSUE』(本阿弥書店)、著者「あとがき」に、
私の第二句集です。(中略)短期間での句集ですので編年体ではなく、モチーフごとに並べ、読みに資するような小文をいれました。しかし、本来、俳句作品は自由に読んで戴くのが筋ですので、どうぞ自由にお読み戴きたく思います。
句集名は〈着膨れて立売の手に「BIG ISSUE」〉に因みましたが、「BIG 」よりも「SMALL」が相応しいと考え、そういたしました。したがって句集サイズも小さく致しました。
とある。各章立ての小文・献辞を二つ紹介しておくと、
一、社会現象 一人の人間、ひとつの生物としての自分という小さな存在にたちかえり、そこから改めて時代の基底と切り結ぶほかはないだろう。/坪内稔典
六、いのち すでに生きてきたほうの人生が、つまり下書きであって、もう一つのほうが清書だったらねぇ。/チェーホフ
である。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。
「塩」よりも「鹽」の字辛し魚醤(うおひしお) 浩
おつぱいのかたちの山の焼かれけり
十国の七国見えず濃あぢさゐ
姿見を曲がり損ねし冬の蠅
夢道忌や煙の出ないたばこ買ふ
たましひはしろはなねむのひとよはな
乗りくるに親子もあらむ茄子の馬
点と点つなげば生るる大文字
冷まじや天向くままのデスマスク
国光(こつこう)とふ滅びしものの堅さかな
「雪の降る街」に生まれて雪嫌ひ
今年また柱の増ゆる原爆忌
右利きは右手を汚し梅を干す
手の甲は手の平よりも冷たくて
鳥の恋手札五枚がみなハート
じやがたらのおはるむらさきじやからんだ
吐魯番(トルファン)に行きたし水辺には小鳥
栗林浩(くりばやし・ひろし) 昭和13年、北海道生まれ。
撮影・鈴木純一「ひとまずは息をととのえ捩の花」↑
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