『稲畑汀子俳句集成』(朔出版)、帯の惹句に、
伝統俳句を牽引し、全身全霊を俳句に捧げた稲畑汀子。八十年に及ぶ句業の集大成!
祖父高浜虚子と父高浜年尾に学び、「ホトトギス」主宰を継承した汀子。人間も自然の一部として詠み、現代の花鳥諷詠を実践、俳句を「共生の文学」へと深めた。既刊七句集に未刊句集『風の庭』を加え、作品五三九八句を収録。本書は、これからの伝統俳句の大いなる道標である。
慈愛と明るさに満ちた天衣無縫の俳人。
とある。句集解題は岩岡中正、稲畑汀子年譜は小林祐代編、汀子生前にまとめられていたので「著者あとがき」は稲畑汀子。栞文は、宇多喜代子「器量人 汀子さん」、大輪靖宏「花鳥諷詠の中興者なる汀子先生」、長谷川櫂「𠮷野の桜」、星野椿「昼霞」。その星野椿は、結びに、
六甲に触れし雲あり風花す 平14
六甲の昼霞が汀子を隠してしまったに違いない。
お墓は西宮にあるという。またいつか、お墓参りに行きたいと思う。
鎌倉に帰宅してから涙が止まらない。
「そう悲しまないでよ、しっかり頼むわよ。」
そういって微笑んでいる汀子の声が聴こえる。
と記している。そういえば、かつて、金子兜太と稲畑汀子のある雑誌の正月号用の対談に立ち会ったことがある。兜太が下ネタふうのことをしゃべると、だから品がないというのよ・・、と答えられていたことや、笑いながら兜太と仲良くされていたことや、ご子息の稲畑廣太郎のことを話されたときの、笑顔が思い出される。ご冥福を祈る。ともあれ、ここでは、未刊句集『風の庭』から、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておきたい。
わが生活一人に馴れて春隣 汀子
不安なき日は何時のこと下萌に
復興の遅速三寒四温かな
我家その未明に焼けぬ原爆忌
蜻蛉に影なき高さあることを
悼 武原はん様
雪を舞ひ月を舞ひ鶴帰りけり
虹消えてゆく消えてゆく誰もゐず
ともかくも掃く今日までの落葉かな
子規の心虚子の心や秋彼岸
軍艦も遊船も波つゞきかな
被災地の野山の錦崩れしと
言ふよりは言はざることのうそ寒し
虚子忌
五十年花の忌日を重ね来て
元気かと問はれ元気といふ残暑
日本橋生まれの母に震災忌
稲畑汀子(いなはた・ていこ) 1931年1月8日~2022年2月27日、享年91.横浜市本牧生まれ。
★閑話休題・・「異形のヴァンダーカンマ―」2022年6月3日~6月9日(木)、於:Bunkamura Box Gaiiary(渋谷区道玄坂2-24-1)・・
撮影・芽夢野うのき「夢こそ此岸川のほとりの夕化粧」↑
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