2020年7月17日金曜日

澤好摩「龍天に昇る日和をご存じか」(『返照』)・・・




 澤好摩第5句集『返照』(書肆麒麟)、著者「あとがき」には、集名について記した部分がある。

 今回の集名「返照」とは、いわゆる照り返しのことであり、前句集の「光源」を受ける点でも悪くないかと思ったが、辞書を引くと仏教用語では〈真実の自己に照らして内省すること〉という意味があり、私の今の心境に相応しいように思われたので、この題に決めた。勿論、仏教用語にそういう意味があるということは、ほとんどの読者には伝わらないが、それはそれで構わないであろう。
 寡作多捨といっていい私にとって、八年間の作品をもって一集を編むのは初めてのことであるが、年齢が年齢なだけに、やや先を急ぐ思いがあるのかも知れない。

 と、いう。ともあれ、集中より、愚生好みになるが、いくつかの句を挙げておきたい。

   夜も更けて秋七草を文字鎖        好摩
   霊山の多き八洲を黄砂かな        
   蹲踞(つくばい)の水盛り上げて落椿
   空砲に煙ありけり春の海
   傘つひに荷物のままや夏の旅
   竹は竹に凭れて倒るるあいの風
   雨つたふ白樺の木の夏仕舞ひ
   逢ふまでは隠れ滝なり深む秋
   おとうとよ雪野の奥に雪の山
   翌檜やわれら没後の春の暮
   水くらげ深さは空にこそあらめ
   寝流れの鮫の行方や青満月
   家どれも裏を見せあふ霜の墓
   秋の蚊を打つて蚊のなき盆の窪

 澤好摩(さわ・こうま) 1944年、東京都江東区生まれ。




★閑話休題・・・干場達矢「ふたり入りもう出てこなさう薔薇の園」(「トイ」VOL.2)・・・   

「トイ」VOL.2(トイ編集室)、4名の同人誌である。うち3名が「豈」の同人でもある。「あとがき」の結びに、

 これからもみなさんの詩心を触発する「トイ」でありたいと思っています。次はまた冬の初めにお目にかかりましょう。(達)

 とあった。以下に一人一句を挙げておこう。

  仏壇のところどころのあたたかさ       樋口由紀子
  更衣なにやらうはのそらなれど         青木空知
  人とウイルスいずれぞ淋し卯の花垣       池田澄子
  悪文にリズム先刻より囀            干場達矢



       撮影・鈴木純一「限りなくイエスに等しねぢの花」↑

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