2019年10月20日日曜日

銀畑二「蓑虫のちちよちちよははよはは」(第9回「ことごと句会」)・・

 


 昨日、19日(土)は、第9回ことごと句会(於:ルノアール新宿区役所横店)だった。以下に一人一句挙げておこう。兼題一句は(青・蒼・碧・藍)。

  大佐渡と小佐渡山間(やまあい)子守柿       銀 畑二
  ちんまり風見鶏潮風に錆し             照井三余
  ピアニスト見えぬ手で抱く赤い薔薇       たなべきよみ
  黙劇や「おかしみ」「怖さ」里神楽         武藤 幹
  街角より白泉の猫丘を見る             大井恒行




★閑話休題・・・山頭女「ドサ回り戦後生まれの敗戦日」(藤田三保子俳句絵展)・・・


 愚生は、昔に比べると、都内に出ることもめっきり少なくなってきたが、この日は、ことごと句会を終えて、その足を延ばして日暮里の藤田三保子俳句絵展〈於:スタジオムジカ・~23日(水)〉に顏を出した久しぶりで藤田三保子に会った。会場のスタジオムジカは、「丘のうえ工房ムジカ」内にある。詩人の葛原りょう、またの名を髙坂明良(歌人・俳人)の経営する工房・スタジオであり、スナックでもある。当然ながら句会・歌会のためのスペースもとれる。本棚には攝津幸彦の『鹿々集』(サイン本)や出たばかりの藤原月彦全句集もあった。中でも懐かしかったのは福島泰樹「月光」の巻揃いだった。愚生も創刊号も含め幾度か寄稿した記憶がある。装幀の間村俊一、当時は飯田橋に事務所があり、何度かお邪魔もした。もう、20年以上前のことである。


  しやぼん玉 空割れないやうに割れた    髙坂明良
  箱がある薔薇で溢れさせたい        
          
                (「ムジカ」2号より) 

  

2019年10月19日土曜日

川島紘一「婆(ばば)独(ひと)り男仕事や冬構」(第196回「遊句会」)・・



 一昨日は、第196回遊句会(於:たい乃家)だった。句会の連衆は、先師・坂東孫太郎師匠の命日にちなみ墓参を済まされて来られたので、愚生が会場に着いたときには、すでに皆さんは勢揃いされていた。以下に一人一句を挙げておこう。今月の兼題は、冬構え・凩・こんにゃく。

  凩をびんに閉じこめもっている    原島なほみ
  木枯し諍(いさか)ふ木々の声高し    山田浩明
  冬構え鉢植えふたつ処分せり       村上直樹
  凩に言葉飛ばされ二人連れ         石川耕治
  四本のウオッカ買ひて冬構え      武藤 幹
  遺言を書き直しての冬構え       渡辺 保
  蒟蒻や人の見難(にく)き裏表      石原友夫
  ユニクロの今日のチラシの冬構え   植松隆一郎
  ネコになろ床暖房の冬構え     たなべきよみ
  凩の風によろける酒看板        前田勝己 
  蒟蒻や脇(ワキ)の主役(シテ)なり鍋料理  石飛公也
  木枯や被災住宅吹き抜ける       川島紘一
  冬構え祖父の頃から来る庭師      天畠良光
  父はこんにゃく母もこんにゃく遊べとよ 大井恒行
 
☆欠席投句・・ベスト1チョイス・・・

  木枯しや明治通りの女子社員    春風亭昇吉
  凩や風は螺旋の束となる       林 桂子
  板塀の補修は確冬構         加藤智也

次回は、11月21日(木)、兼題は、蒲団・顔見世・山茶花。


  

2019年10月17日木曜日

佐藤文子「草の罠ほどきて月を通しけり」(『火炎樹』)・・・



 佐藤文子第三句集『火炎樹』(東京四季出版)、集名に因む句は、

  火炎樹や愛されぬまま髪を梳く    文子

だろう、とあたりをつけたのだが、著者「あとがき」には、

 平成から令和になる五月一日、私はカンボジアのアンコールワットに、そしてベトナムのハノイへ旅をつづけていました。その途中、とある公園でまっ赤な花をつけた「火炎樹」に出会いました。大樹でありながら、人知れず、目立たず佇む木。私はその木に心ひかれました。丁度句集の出版を考えていたところだったので、迷わず句集名を「火炎樹」としました。

 とあった。ブログタイトルにした句「草の罠ほどきて月を通しけり」には、佐藤文子が穴井太の弟子であったことを思って、すぐさま、穴井太「ゆうやけこやけだれもかからぬ草の罠」への返句かもしれないと思ったりした。もう何十年も前のことになるが、佐藤文子は現代俳句協会青年部創立時の信州地方における重要な役を担っていた。随分とお世話になった。
 ところで、本集の装幀は宇野亜喜良。凝った作りである。カバーをとると、表紙には、カバーとは別のイラストが描かれている(上掲写真)。また本扉には珍しい箔押しの文字・罫・イラストである。苦言を一つ。許されよ。「湯冷めして骨の髄まで棒になり」(148ページ)と「湯ざめして身体の芯まで棒になり」(180ページ)は同曲の句と思われる。「あとがき」に、二千句からの選とあったので、もったいない。別の一句が欲しかった、というのが愚生の欲張った願いである。ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。

  楤の芽や棘のあるのも誇りなり
  今日は毒忘れて来たり熊ん蜂
  空っぽの涙袋へ春の水
  始めから出口の見ゆる花トンネル
  金魚にはなれぬ銀魚や大都会 
  洋梨や摩耗劣化の平和論
  ファックスを出てくる百万枚の枯葉
  冬初め鬼の出て来ぬかくれんぼ
  雪女後ろ姿は赤き影
  天辺に陽を片寄せて細雪
  白鳥の瞳の濡れて飛び立てり
  火遊びに飽きて焚火を踏み躙る
  

佐藤文子(さとう・ふみこ) 昭和20年、三重県生まれ。

  

2019年10月15日火曜日

高柳重信「『月光』旅館/開けても開けてもドアがある」(『人それを俳句と呼ぶ』より)・・・



 今泉康弘評論集『人それを俳句と呼ぶー新興俳句から高柳重信へ』(沖積舎)、帯の惹句は小林恭二。それには、


 新興俳句運動を可視的な時代性と対比検証することで文学史上の位置測定を試みた。野心的かつ緻密で詩的な評論集だ。

 とある。愚生よりも約20歳若く、文字通り俳句批評の次代を担う俳人の一人であろう。本書に収録された論の多くを、初出誌の「円錐」「夢幻航海」「俳句界」「しんぶん赤旗」などで眼にしているので、本書をまだ隅から隅まで読んではいないが大よその想像はつく(加筆があるとはいえ、巻末に「初出一覧」でも掲載していただければ、もっと良かった)。待望された一書である。今泉康弘はこれまでも多くの批評文を書いて来ているので、第二弾、第三弾が出てもおかしくはない。小林恭二が「野心的かつ緻密で詩的」と述べているように、読者を引き込んでいく筆力がある。確か、愚生が文學の森「俳句界」に入社して、すぐの第12回山本健吉評論賞を「ドノゴオトンカ考ー高柳重信の出発」で受賞した。その時の選者評も、読ませる力、読者をぐいぐい引き込んでいく筆の力がある、という、他の応募者を圧してのものだったように記憶している。本書名の由来については、著者「後記」に、

  本書の書名は『人それを俳句と呼ぶ』とした。しかし、一般の俳句観、即ち、俳句は必ず季語を使い、花鳥諷詠を内容とする、ということからすると、この書名に疑問を抱く人は多いだろう。というのも、本書の「青い街」では白泉の無季俳句を主題にしているし、巻末で扱った「伯爵領」も花鳥諷詠とかけ離れた世界であるからだ。それを俳句と呼ぶのか、と訝しむ人も多いだろう。だが、ぼくは言う。これが俳句だと。
 俳句とは何か、という定義は時代によって変わる。定義は人間が作るものだからだ。だからこそ、この書名にした。これがぼくの俳句観である。そのことを前提としながら、俳句について考え続けていきたいと思っている。

 と、言挙げしている。一読を勧めるにやぶさかではない。




 ところで、彼の略歴に、「1989年、第2回『俳句空間』新人賞受賞」とあるのは、「俳句空間」新鋭作品(10句一組)を応募して決める登竜門で、対象の2名の一年間の選者は、小檜山繁子と夏石番矢だった。彼がまだ21歳の時である。30年以上は以前のことになる。以下は若書きながら、受賞第一作30句から、

  風の日は大草原に来て坐る    康弘
  渡るべき河あり風の中にあり
  喪の手紙真白き街へ出て開く
  卒業や机を海に対峙する
  桐の花池の暗さに手を入れる

今泉康弘(いまいずみ・やすひろ) 1967年、桐生市生まれ。

中西ひろ美「駅を出て直ぐピーを出すをとこへし」(第8回「ひらく会」)・・



 昨日、10月14日(月)は第8回ひらく会(於:府中市市民活動センタープラッツ)だった。台風一過の青空も一日で雨模様の空に逆戻り。ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。

  星月夜うっすら不機嫌に帰る      中西ひろ美
  ひも状のものとすみなす良夜かな     鈴木純一
  小さき蝶飛び立つ萩の一眼や     救仁郷由美子
  三世草木照らして十五夜のぼりくる    成沢洋子
  破れ蓮に猫ゆまりして来て見つむ     渡辺信明
  灯に映えて影龍となる菊人形       大熊秀夫
  街に三叉路三島忌を思えらく       大井恒行




★閑話休題・・中西ひろ美「貝のなかの貝なので口をあかない」(「垂人」第36号より)・・


 中西ひろ美つながりで「垂人」第36号(編集・発行 中西ひろ美、広瀬ちえみ)を紹介する。俳句、短歌、歌仙、エッセイなど内容は盛りだくさん。鈴木純一は「垂句摸魚」「垂句摸月」「垂句摸華」と題して、各人同号の発表の句評を入れている。ここでは歌仙「長春歌」の初表と裏の初句を挙げておこう。  

  長春花アバンギャルドな赤い爪    ダークシー美紀
    穀雨にまつげぬらす人形        佛渕雀羅
  踊り手は朧おぼろの中を来て        小池 舞
    屋台の灯遠ざかるまま        中西ひろ美
  竜宮の月を知らない魚とゐる        鈴木純一
    霧たちそめし沼のほとりに       渡辺信明
 ゥ 小鳥くる機嫌よろしき次の家      佐々木笑女  

 以下には、同号より一人一句を挙げよう。

  時の日やAはすでにAでない        野口 裕
  昼顔のにりんは姉妹乳房向け        坂間恒子
  のほほんとめるくまーるや春ともし    ますだかも
  振りかえるたびに沼あり光るなり     髙橋かづき 
  瓦礫から楽譜ママに会えたような     広瀬ちえみ
  待つときの顔のちぐはぐ花蘇枋       河村研治
  見る人も変はりて崖の櫻かな       中西ひろ美 
  のらぼう菜あらふ厨の渚にて        渡辺信明


    

2019年10月14日月曜日

後藤秀治「日を置いて痛みは来たり蓼の花」(『国東から』)・・



 後藤秀治第一句集『国東から』(書肆麒麟)、装画は河口聖。帯には、

  行く秋のひたすら笑ふ神事かな  
国東は、奈良から平安時代にかけて、仏教(天台宗)に宇佐八幡の八幡信仰(神道)を取り入れた〈六郷満山〉と呼ばれる神仏習合発祥の地で、寺院や旧跡も多い。その地に生を得、かつ、育まれた著者によって発信される渾身の第一句集。

 とある。また、著者「あろがき」には、

 本句集は俳句を始めた五十代半ばから平成三十一年までの約十五年間の二百余を収めた。(中略)
 独学で通していたら私の意欲はとうに潰えていただろう。俳句表現の新しい可能性を真摯に求め続ける「円錐」でこれからも学びながら、俳句に携わる以上はどこかでかすかなりとも芭蕉や子規につながっていたいと思う。(中略)
 国東から周防灘へ句集という瓶を流す。どこで誰に拾われるのだろう。いつか誰かに拾われて、中の一句だけでも面白いと思ってくれたらうれしい。「国東から」という書名にはそんな思いをこめている。投瓶通信のゆくえを思うことは私の希望である。
 
 と記されている。ともあれ、集中よりいくつかの句を挙げておきたい。

   澄むほどに青き地球や鳥渡る     秀治
   冬麗の石を起こせば仏居り
   鳴きまねで笑うて鶴を送りけり
   自然薯の食ふには惜しき捻ぢれやう
   天網にちよんと触れたる凧
   したたかに酔はせ桜が鳥を吐く
   八月や黙禱ばかりしてをれぬ
   故郷は老いを赦さずつくつくし
   郭公や床上げの母連れ出しぬ
   箱庭に亡き弟を泣かせたり

 後藤秀治(ごとう・しゅうじ) 1951年、大分県生まれ。



撮影・葛城綾呂 ども~ ↑

2019年10月13日日曜日

金子兜太「妻よまだ生きます武蔵野に稲妻」(『百年』)・・



 金子兜太第15句集『百年』(朔出版)、2008~2018年(88~98歳)の兜太最後の作品736句を収める遺句集である。後記に安西篤。句集掉尾の句は、

  河より掛け声さすらいの終るその日   兜太
  陽の柔わら歩ききれない遠い家  

 である。愚生は、兜太は長生きの血筋だから、わけもなく100歳までは絶対生きると思っていた。それでも大往生というべきだろう。兜太は、毎日立禅をすると言っていた。亡くなった友の名を日々唱えるのだが、いつも100人くらいまでは・・と言っていた。長生きの代償のように、本句集にも追悼句で溢れている。なかには、愚生のよく知っている人もいる。本集には、金子兜太の「慶應病院入院に一か月入院 十句」の前書付の中の句に、

  いのち問われて十六夜を過ごす

 があるが、皮膚病で入院されていたのだ。愚生が病院に見舞ったときに、「さっき鈴木忍が帰って行ったよ」と言われ、少し世間話をした。当時、鈴木忍は「俳句」の編集長をしていて、愚生は、名ばかりだが、「俳句界」の顧問だった。ふらんす堂の山岡喜美子の話も、池田澄子の話も出た。9年前の事だ。兜太はまだ元気だった。ともあれ、追悼の句を、以下にできるだけ挙げて置きたい。

 2009年 阿部完市 二月十九日他界
  完市よ菜の花も河津桜も雨 
     川崎展宏 他界
  冬樫の青しよ展宏の笑顔
 2010年 井上ひさし 他界
  白鳥去りの道とぼとぼわが一茶
     橋本圭好子 他界
  疳高い電話の声よ遠桜  
     立岩利夫 他界
  蟬時雨真面目真顔のまま老いて
     林 唯夫 他界
  湖国に病みて長かりき直(ちょく)なりき
     小林とよ 他界
  亡妻と同学の親(しん)蟬しぐれ
     森澄雄 他界
  堪えて堪えて澄む水に澄雄
     上林 裕 他界
  残暑酷し他界の友よ木蔭を行け
     松澤 昭 他界
  引っぱって震わせて山の男の月の唄
 2011年 髙橋たねを 他界
  流氷の軋み最短定型人(じん)
     峠 素子 他界
  冴えて優しく河原の石に峠素子
 2012年 山田緑光 他界
  激しくて草餅の味緑光は
     大木石子 他界
  (な)が生家五月草の香にありき
     中島意偉夫 他界
  人のためにこの人あり春怒濤
     蓮田双川 他界
  野に泉味わえば渋し鋭し
     加地桂策 他界
  夏潮を素裸かで泳ぎ来し塩味
     林 杜俊 他界
  笑うとき夏の桜島ありき
     渡辺草丘 他界
  館林にこの人の声山法師     
     小堀 葵 他界
  楊梅(やまもも)の小堀葵と思いきし
     辺見じゅんさん 昨秋九月二十一日他界
  じゅんさんのいのち玉虫色にあり
 2013年 小沢昭一氏 他界
  正月の昭一さんの無表情
    西澤 實 他界
  句と詩のといまも南凕に立つや
    村上 護 他界
  青葉の奥明るく確と漂泊す
2014年 村越化石 他界
  生きることの見事さ郭公の山河
2016年 弟千侍(せんじ) 他界
  青空に茫茫と茫茫とわが枯木
    妹稚木(みずき) 他界
  紅梅えお埋めし白雪無心かな
2017年 日野原重明さん百五歳で大往生
  日野原大老ゆっくり真面目そして真面目
               
     
                                 
         撮影・葛城綾呂 寝そべっても毛づくろい ↑