2023年1月3日火曜日

武馬久仁裕「国境の石に彫られた花一つ」(『八月、サハリン島』)・・


  武馬久仁裕『八月、サハリン島』(私家版・しまうまプリント)、文庫版、32ページ、オールカラー、限定50部(2023年1月1日発行)。武馬久仁裕は2018年夏、サハリン(樺太)を訪ねた。


  

      サハリンの夏の扉を軽く押す     久仁裕


2018年/八月一〇日/午前九時/豊原に着いた」とあり、次ページに、「レーニン像の向うは、ユジノサハリンスク。旧豊原(とよはら)」とあった。

     真っ黒のレーニン像の胸のうち

そして、「真新しいロシア正教会。見学し、売店で紙のコインを十枚ほど、お土産に買った」と。

     金色の周囲隈なく不安定



また、「19世紀の独房が復元されて、博物館の庭にあった。覗けば手枷足枷。露暦1890年7月11日、チェーホフは、『罪囚の孤島』サハリン島に上陸した」とあった。

     チェーホフの愛した女囚の名はソフィア、


あるいは、「王子製紙(冨士製紙)落合工場跡。大正13年3月4日、伊藤凍魚・山本一掬らは工場倶楽部で句会をし、その後、俳誌『氷下魚(かんかい)』創刊。樺太俳句が始まった。一掬の句は昭和8年のものであった」。俳誌「氷下魚」は原石鼎門下の伊藤凍魚らが始めたという。


   立ちならぶ煙突五本風光る           一掬

   ななかまど稚葉(わかば)もみぢのうつくしや  凍魚

   凍港や旧露の街はありとのみ          誓子

   えぞにうの花しろじろとと雨の中        一魯

   

 山口誓子の句は、大正15年作(句集『凍港』昭和7年所収)。山口誓子全集第5巻には、「大泊の港は冬に凍った。…海が氷で覆はれると砕氷船が入ってくる」と書かれている。

ともあれ、集中より、武馬久仁裕の句をいくつか挙げておこう。



   琥珀海岸取るに足りない男おり

   あれはなにと蝦夷丹生をさすしろいゆび

   夏草の野田(チェーホフ)駅までとわずか

   驟雨去りユジノサハリンスク疎し

   秋風にウオトカ揺れるころとなり


 武馬久仁裕(ぶま・くにひろ) 1948年、愛知県生まれ。



   撮影・中西ひろ美「かんじんなところにじみて雪の恋」↑

0 件のコメント:

コメントを投稿