2020年11月24日火曜日

滋野さち「セシウムは無味無臭 スカシッペより寡黙」(『はじめまして現代川柳』より)・・


 小池正博編著『はじめまして現代川柳』(書肆侃侃房)、「はじめに/現代川柳とは何か?」で、


(前略)「現代川柳」には「現代の川柳」とは異なったニュアンスがある。一九七〇年前後、「現代川柳」は「革新川柳」「前衛川柳」という意味で川柳界では受け止められていた。「伝統川柳」と「現代川柳」という対立軸があったのだ。現在では伝統と革新ということはあまり言われなくなったが、伝統であれ革新であれ、文芸としての川柳を志向する作品を「現代川柳」と呼んでおこう。(中略)

 本書には現代川柳の作者、三十五人の作品を収録している。全体を四章に分け、第一章と第二章には現代川柳を牽引してきた作者の作品を収録。第三章には現代川柳の源流としての新興川柳と戦後川柳の作者を、第四章には次世代の活躍が期待される作者を収録した。


 とある。また、愚生のような門外漢には、簡略な現代川柳の概説ともいうべき第五章「現代川柳小史」が巻末にあるのは嬉しい。その部分に、


 現在、川柳のフィールドでは様々な作品と川柳観がダイナミックに生れている。冨二・春三から時実新子までが現代川柳の第一世代だとすれば、本書の第一章・第二章に収録されている川柳人は第二世代・第三世代に属する(これは厳密な区分ではなくて、たとえば墨作二郎は第一世代に入る)。(中略)

 句会だけで充足していた時代からテクストの「読みの時代」へ。さらに「句集の時代」へと進んできているし、「毎週WEB句会」の森山文切のように句会だけではなくSNSを通じて川柳を発信する作者も登場。現代川柳の今後が楽しみだ。


 とある。また帯の惹句には、「川上日車、石部明から八上桐子、柳本々々まで35名の76句選」とある。ともあれ、アトランダムになるが、本書のなかより、いくつかの作品を挙げておこう。


   病棟や父「撤収ッ」を連呼せり      石田柊馬

   銀河から戻る廊下が濡れている      加藤久子

   正確に立つと私は曲っている      佐藤みさ子

   鶴を折るひとりひとりを処刑する     墨作二郎

   愛人もインフルエンザもアポなしで    浪越靖政

   脱ぐときの妻は横目で僕は伏目      渡辺隆夫

   兄ちゃんが盗んだ僕も手伝った     くんじろう

   処刑場みんなにこにこしているね     小池正博

   相似形だから荒縄で縛るよ       清水かおり

   どうしても椅子が足りないのだ諸君    筒井祥文

   ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ  なかはられいこ

   人体にある凸凹を美女という       野沢省吾

   風立ちてインドのかたちして眠る     畑 美樹

   あの世からこの世へやってきてドボン   松永千秋 

       鶴は折りたたまれて一輪挿しに      飯島章友

   中八がそんなに憎いかさあ殺せ      川合大祐

   いけにえにフリルがあって恥ずかしい   暮田真名

   たてがみが生えてきたので抜いている   榊 陽子

   美しい鍵だ使えば戻れない        竹井紫乙

   手のひらのえさも手のひらもあげる    芳賀博子

   すりがらす自己紹介をせがまれる     兵頭全郎

   チャンネルを替えると無口になった    湊 圭史

   水を 夜をうすめる水をください     八上桐子

   した人もしてない人もバスに乗る     柳本々々   

   二週間経ったら思慕は意味になる    樋口由紀子


小池正博(こいけ・まさひろ)1954年、大阪府生まれ。



      芽夢野うのき「さしはなつエンゼル冬野で鬼となる」↑

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