2016年12月1日木曜日

駒木根淳子「悠久を旅してゐたり蝸牛」(『夜の森』)・・・



駒木根淳子第二句集『夜の森』(角川書店)は、愛情あふれ、かつ懇切を極めた山下知津子の跋に以下のように記されている。

 二〇〇五年五月一月から、駒木根さんと私たちはささやかな同人誌「麟」を刊行しているが、皆で考えた「創刊の辞」に次のような一節がある。
「痛切に自分の生活実感に即し骨太に、自分に引きつけて、自分の熱い息とともに吐き出される言葉で、五七五という冴えた器を満たしたい」(中略)
「麟」はもう一つの大きな柱として、共同研究という形での「女性俳句研究」を続けている。(中略)
 この「女性俳句研究」における駒木根さんの研究ぶり、執筆ぶりに、私はいつも敬服している。まず、一次資料や初出の文献に可能な限り徹底的に詳細に当たり、丹念に調べ上げる。(中略)
彼女の調べ上げる情熱とたくましい行動力、そして調べるスキルと能力の高さに、私はずっと尊敬の念を抱き続けているのである。

彼女が、こうした地道な努力を惜しまず、真面目に取り組む姿は、「豈」同人だったこともある故渡部伸一郎からも聞かされていた。
ところで句集名『夜(よる)の森』の由来は、駒木根淳子の故郷・福島の原発から7キロメートルにある桜の名所「夜(よ)の森公園」に由来する地名で、現在は帰還困難区域にあるのだという。句は、

  見る人もなき夜の森のさくらかな      淳子

ともあれ、以下に愚生好みの句をいくつか挙げておこう。

  水餅の闇より母の手がもどる
  天上に父の豆撒く声あらむ
  傾がざる電柱はどれ夏つばめ
  ぼた山のいつか草山葛嵐
  読初となす白泉の戦時詠
  風船爆弾作りし母よ八月よ
  秋夕焼次の戦争まで平和
  涅槃図やうねりて波の崩れざる

駒木根淳子(こまきね・じゅんこ)、1952年、いわき市生まれ。
  



                        カラスウリ↑


0 件のコメント:

コメントを投稿