2017年7月22日土曜日

小津夜景「あたたかなたぶららさなり雨のふる」(『フラワーズ・カンフー』)


『第8回田中裕明賞』(ふらんす堂)↑


              小津夜景と柳人の兵頭全郎・右端に小池正博↑

 今夜は、四ッ谷三井ガーデンホテルのピッツアサルヴァドーレクオモ四ッ谷に於て、「小津夜景『フラワーズ・カンフー』を祝う会」が開催された。明日は第8回田中裕明の受賞式だという。
いわば前夜祭のようなものかも知れない。若い俳人・歌人・川柳人などが多く、熱気のある会だった。愚生もすでに参加者としてはあまり多くない年寄り組だろうな・・・と思った次第。「豈」同人では遠路ながら小池正博、また、橋本直、関悦史、次号より同人参加の佐藤りえに会った。
 ふらんす堂の『第8回田中裕明賞』の選考委員会の選考経過を読むと、第一位に岸本尚毅・四ッ谷龍が推していて、他の選考委員・小川軽舟、津川絵理子も評点が入っているので、小津夜景の受賞は順当であったろう。
 中でも小川軽舟は以下のようにのべていて納得だった。
 
 私も一句目の「あたたかなたぶららさなり雨のふる」というのは、読んだときにビックリしました。私もアルヴォ・ベルトのCDを昔買っていたので、その印象もありましたし、四ツ谷さん仰るように子規の句も思い出しました。子規の句は山本健吉『現代俳句』に一番最初に出てきたと思うんです。子規の句を踏まえながら、子規から始まる近代俳句とは別の世界が真っ白なところから始まるんだという、ある意味宣言のような句だと受け止めました。それが実に軽やかにさりげなく詠われていて。「たぶららさ」をひらがなで書いたところも上手いなと思いましたね。

 俳句界では久々の新星の登場という感じだが、それだけ、今後の小津夜景の歩み方に興味と期待が寄せられている。因みに、品切れだった『フラワーズ・カンフー』の三刷が決まったとふらんす堂の山岡有以子が報告し、是非、さらにお買い上げ下さいと挨拶宣伝していた。また、先日106歳で亡くなられた、存命であればお祝いの花束が贈られていたであろう、金原まさ子(長女・植田佳代)からの花も飾られていた(下の写真)。


                          
               故・金原まさ子(長女・上田佳代)よりの花↑

ともあれ、以下にいくつかの句を挙げておこう。

  とびらからくちびるまでの朧かな    夜景
  もがりぶえ殯(もがり)の恋をまさぐりに
  長き夜のmemento moriのmの襞
  ふるき世のみづにも触るるミトンあれ
  人はいさ蓮にしづかなみづばしら
  くらげみな廃墟とならむ夢のあと

小津夜景(おづ・やけい) 1973年、北海道生まれ。




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