2020年9月8日火曜日

善野行「星一つ青く真闇に澄みゐたる」(『聖五月』)・・・


  善野行第一句集『聖五月』(邑書林)、懇切な序は山田六甲。その中に、本集名にちなむ句について、以下のように記してある。    

  教へ子に母の面影聖五月 

  俳人は代表句が一句あれば幸せである。代表句とは、決して名句でなくてもいいが、善野行の句は?と聞かれたら、「聖五月の句」とたちまち口誦(こうしょう)してもらうに違いない。 この作品は教師としての日常の中にふと、女子生徒の仕草、表情が亡くした母の面影に連なり、聖母マリアに重なったにちがいない。(中略)
  歳時記の例句を探しても聖五月の季語に合致する句は平畑静塔の「鳩踏む地かたくすこやか聖五月」くらいしか見当たらないが、行は「聖五月」の季題にあらためて光を当て季語を開いた。掲句は、娘ほど、いや妹のような少女に持った軽い罪の意識などに聖五月の響きがよい。教師の内面的な狼狽がとても印象的。 

 とあった。 ともあれ、愚生の好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。

   万象の逆さに沈む植田かな          行   
     寝不足の目にうすものの膝頭    
  気にかかる留守電のあり万愚説  
  樟若葉一揺れ二羽の鳥を出す    
  夕暮の橋黄落に明るみぬ    
  志半ばなりしを去年今年    
  繭玉のうす暗がりを払ひたる   
  桐の花見よやと猿の隠れけり   
  遠山のなほ遠ざかる大西日   
  霖雨かな葛の向うにたぎつ音  
  たたなづく青垣や梅雨明けにけり    
  鈴虫という駅を過ぐ日の盛     
    元大阪大学事務局長・高村三郎氏、晩年脳梗塞により首から  
    下の全感覚を失うも、意識確かにて特別なパソコンにて作句、 
   「いつまでもころがっている身となれりふかむ秋」の句あり。   
  虫の闇思へば手足捥がれけり  

  善野 行(ぜんの・こう) 1957年、神戸市生まれ。  
          撮影・鈴木純一「穴まどひ最小抵抗線上を」↑ 
 
 愚生注:ブログの打ち込み、表示など、これまで通りの操作ではうまく出来なくなっていて、申し訳ありませんが、このまま、アップさせていただいています。読みにくくなっているかも知れませんが、愚生のパソコンの技術レベルでは、ここまでのような・・・お許しを・・(少しは、修正できているようですが・・」

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