2015年2月6日金曜日
「冬日とほき陵墓石階を重ねたる」三橋敏雄・・・10
「朝」第二号・敏雄句↑
今回は「朝」第一巻・第二号。小澤青柚子(「三章」3句)、渡邊白泉(無題3句)、細谷碧葉(「鐵工忌」3句)の寄稿。藤田初己による懇切な前号評「朝にほふ」がある。冒頭に「『朝』創刊号の作品とその作者たちの平均年齢とは、新興俳句運動の将来にあかるい希望を約束してくれる。きはめてたのしい心でこの一冊を読みをはつたことをまづおしらせするのが、わたくしの義務である」と書かれてある。
また、三橋敏雄の前号句には丁寧に批評が加えられているが褒めるだけでなく厳しい指摘もしている。例えば「月明かり衢に坂が多く照る」の句については以下のように記している。
第三句―内容は非常にうつくしい。「衢に坂が多く(あって、そして)照る」といふ意味であるに違ひないのだが、どうも第一読の印象では「多く」が「照る」にかかる副詞のやうに誤られ易いと思ふ。下五のなかに二つの概念をつゞけて結びつける叙法は山口誓子のしばしば用ゐる手だが、よほど上手にしないと、せヽこましくなるか、あるひはこの句の場合のやうに、意味の混乱を招き易い。
同号掲載の三橋敏雄は5句。
多摩御稜(『
三橋敏雄
陵の苑こがらしの梢湛めつヽ
冬の陵玉砂利をふむ音停り 『太古』所収(・・・音とまり・・)
冬日とはき陵墓石階を重ねたる
陵に昏れ短日の星斗たちまち見ゆ 『太古』所収
陵を去るつねの冬服にわが背あり
同号編集後記には「三日の新年句会(於細谷碧葉氏宅)は出席者十一名、高屋窓秋、藤田初己、渡邊白泉、小西兼尾等の諸氏お出席」とある。
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