「となりあふ」創刊号(となりあふ発行所)、「『となりあふ』創刊に寄せて」は今井聖「只の道」。招待俳人の句は、
明るみに出て狼狽の蓮根(はす)くびれ 中原道夫
三寒の思案四温の決意かな 神田松鯉
箭内忍「『となりあふ』創刊にあたって」の冒頭には、
師、故吉田鴻司は酔ってよく「俳句ってのはねぇ(ドンッとテーブルを叩いて)、むにゃむにゃなんですよ!」と俳論を語った。むにゃむにゃは、その時々によって違ったり、よく聞こえなかったりする。俳句は座の文芸、作者ありきの作品、継続は力なりとよく言ってた。俳句の「いろは」は「わらがみ句会」という心底楽しい句座で教わった。
二〇〇六年、吉田鴻司が他界して消沈していたある時、『河』の先達の追悼句会があり、そこで出会ったのが今井聖と清水哲男だった。その縁で『街』に入った。
今井聖の俳論は、吉田鴻司とは真逆だ。俳句は文学だ、『街』の句会は大学院(初心者向きではない)だという。共通点はどちらも常に俳句のことばかり考えている(いた)ことだ。
とあった。構成は「んの衆」と「いろは衆」に分かれていて、「いろは衆」には「春季・巻頭選考会議」というのがあり、箭内忍と神保千惠子の選考評が付されている。ともあれ、ここでは「んの衆」の一人一句と「いろは衆」巻頭作家の一句を挙げておきたい。
ちやらちやらと嘘つくポインセチアかな 箭内 忍
冬天のその先宇宙ステーション 神保千惠子
尻振つてペンギン陸へ冬来る 鈴木わかば
寒鴉ケバブに匂ふ裏通 谷川理美子
ショーウィンドウの中は三密クリスマス 原 美鈴
煤逃の貧乏ゆすり強くなり 廣川坊太郎
隣より聞えて来たる大くさめ 眞鍋芙美子
「ご遠慮します」烏賊墨のスパゲッティ 水谷由美子
マスクして羽根のやうなる眉の形 安田のぶ子
短日や口と同時に手も動き 山口ぶだう
笑ひ声足さるるテレビ歳の暮 久保田真由美
芽夢野うのき「青空の艶をしたがえ枯れすすむ」↑