2021年1月31日日曜日

箭内忍「凍空へ無人の波打ち際の音」(「となりあふ」創刊号・2021春号)・・・

 

 「となりあふ」創刊号(となりあふ発行所)、「『となりあふ』創刊に寄せて」は今井聖「只の道」。招待俳人の句は、


  明るみに出て狼狽の蓮根(はす)くびれ  中原道夫

  三寒の思案四温の決意かな        神田松鯉


 箭内忍「『となりあふ』創刊にあたって」の冒頭には、


 師、故吉田鴻司は酔ってよく「俳句ってのはねぇ(ドンッとテーブルを叩いて)、むにゃむにゃなんですよ!」と俳論を語った。むにゃむにゃは、その時々によって違ったり、よく聞こえなかったりする。俳句は座の文芸、作者ありきの作品、継続は力なりとよく言ってた。俳句の「いろは」は「わらがみ句会」という心底楽しい句座で教わった。

 二〇〇六年、吉田鴻司が他界して消沈していたある時、『河』の先達の追悼句会があり、そこで出会ったのが今井聖と清水哲男だった。その縁で『街』に入った。

 今井聖の俳論は、吉田鴻司とは真逆だ。俳句は文学だ、『街』の句会は大学院(初心者向きではない)だという。共通点はどちらも常に俳句のことばかり考えている(いた)ことだ。


 とあった。構成は「んの衆」と「いろは衆」に分かれていて、「いろは衆」には「春季・巻頭選考会議」というのがあり、箭内忍と神保千惠子の選考評が付されている。ともあれ、ここでは「んの衆」の一人一句と「いろは衆」巻頭作家の一句を挙げておきたい。


  ちやらちやらと嘘つくポインセチアかな    箭内 忍

  冬天のその先宇宙ステーション       神保千惠子

  尻振つてペンギン陸へ冬来る        鈴木わかば

  寒鴉ケバブに匂ふ裏通           谷川理美子

  ショーウィンドウの中は三密クリスマス    原 美鈴 

  煤逃の貧乏ゆすり強くなり         廣川坊太郎

  隣より聞えて来たる大くさめ        眞鍋芙美子

  「ご遠慮します」烏賊墨のスパゲッティ   水谷由美子

  マスクして羽根のやうなる眉の形      安田のぶ子

  短日や口と同時に手も動き         山口ぶだう

  笑ひ声足さるるテレビ歳の暮       久保田真由美



         芽夢野うのき「青空の艶をしたがえ枯れすすむ」↑

1 件のコメント:

  1. 大井さんありがとうございます。
    ご無沙汰しています。
    その後、いかがお過ごしですか?

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