「奔」6号(奔編集室)、特集は「1960年代」。記事は代島治彦監督『きみが死んだあとで』上映会とトークの会、内海治彦「山本義隆『私の1960年代』再読」、佐藤清文「太平洋は踊る」など。愚生の注目は添田馨「令和=論(補遺)フェイクとしての『天翔』報道」であった。愚生にとっては難解な論ばかりであるが、編集後記の望月至高「後記赫赫」には、
(前略)コロナの犠牲者の多くは明らかに貧困層である。日本の医療が崩壊し始めたが、誰もまさかこれほど脆弱だとは思っていなかっただろう。遡れば2009年竹中平蔵菅義偉正副総務省時代の私的諮問会議「地方分権21世紀ビジョン懇談会」に始まる。この時「自治体財政健全化法」が施行され、自治体に分野が異なるものの連結決算を迫った。自治体も経営に失敗すれば、企業なみに破産するとして、市場原理を導入し、自治体間競争を煽ったのである。これによって、公立病院が赤字だと財政再建団体に指定される恐れがあるため、統廃合縮小が行われた。公共性(コモン)が排除されていったのである。厚労省のHPを見ると、2009年(平成21年)から2018年(平成30年)の10年間で公立医療施設は1296から828に、半減しているのである。また、保健所は一市一軒へ。ちなみに大阪市は24軒あったものが、わずか1軒へ。
この新自由主義の根本的誤謬は、水光熱医療教育福祉ー即ち市民の基本的生存条件を他のものと同列にみなし、単純な損得勘定に載せたことである。(中略)
その克服に市民と専門家が時間をかけて作成されたマニフェストが発表されている。このような都市を「フィアレス・シティ」(恐れ知らずの都市)といい、コモンを掲げて完成度の高いバルセロナ市が有名である。2020年の「気候非常事態宣言」は世界的に有名であり、「都市公共空間の緑化、電力や食の地産地消、公共交通機関の拡充、自動車や飛行機・船舶の制限、エネルギー貧困の解消、ごみの削減リサイクル」(斉藤公平著参照)など、240項目に及ぶ包括的行動指針が宣言されている。労働者市民の力は既存の政治家を凌いでいるのである。
と述べてられていた。そして、添えられた便りには、「残念ながら、個人的事情により、6号をもって無期休刊とします」とあった。これまでの奮闘に敬意を表したい。ともあれ、ここでは俳句作品の一人一句を以下に紹介しておきたい。
聖人は極彩色の枯野ゆく 今井照容
特別区なめてうろつく穴惑い 綿原芳美
下放したまま笑う象の三角州 大橋愛由等
繭に似るバギーの後より兜虫 望月至高
天涯の蒼き紐から氷る夜 大井恒行
★閑話休題・・・福島泰樹「六月十五日 デモするわれより鮮烈に路上に割れていたりき西瓜」(『甦る、抵抗の季節』より)・・・
前掲の「奔」と60年安保つながりで、『安保闘争六〇周年・記念講演会記録/甦る、抵抗の季節』(言視舎)。記念講演会は、2020年6月10日(水)13時~、於:憲政記念会館、主催:NO!安保60の会 9条改憲阻止の会で開催された。二つの講演は、保阪正康「歴史の視座に立って 六〇年安保闘争の意味と評価」、高橋源一郎「語り継ぐコミュニケーションとは NOを言わない若者、YESがあいまいな若者」。他に資料編、参加者アンケートなど。パンデミックのなか、500名キャパ、会場側からの100名の人数制限のなかで、開催された集会は、三密を避ける一点突破の「正しく怖れて、自粛を拒否する」(記念講演会実行委員会・三上治「発刊にあたって」)。また、「本講演の開催による新型コロナウイルス感染者は、一人として発生しなかった」と報告されている。愚生がこの本を読むきっかけを作ってくれたのは藤森建二の年賀状による(愚生は二年前から一切の賀状を辞めてしまったが・・)。記録関係者の一人で、ブログ「大槌の風」の人である(閲覧して下さい)。ここでは、本誌より、トップグラビアの歌を記しておきたい。
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや 寺山修司
ヘルメットついにとらざりし列のまえ屈辱ならぬ黙禱の位置 岸上大作
みな雨に濡れていたっけ泣いていたフランスデモの若者がゆく 福島泰樹
釈放されて帰りしわれの頬打つ父よあなたこそ起たねばならぬ 道浦母都子
我は生き彼女は逝きし六月の雨は今年も沛然と降る 世路蛮太郎
芽夢野うのき「口に咥えて薔薇は真っ赤に踊り出す」↑
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