第43回・メール×郵便切手「ことごと句会」(2022年11月19日付)、兼題は「理」+雑詠3句の計4句出し。以下に一人一句と寸評を挙げておこう。
鰤並び競りの手ぶりの速さかな 杦森松一
柿落葉 明日明後日明々後日 金田一剛
薄情も自愛も時に老介護 渡辺信子
椎の実の雨樋(とよ)を転がる夜寒かな 武藤 幹
冬木立風の噂は聞かぬふり 江良純雄
そぞろ寒む棚の撓みの遺物かな 渡邊樹音
理科室の骸骨さんに初時雨 らふ亜沙弥
曇天の秋日に慣れし竿のウキ 照井三余
ふくら雀一歩一歩の世の幸を 大井恒行
【寸評】・・
・「豆腐屋の・・」ー「豆腐」以外に何も語らず「水の澄む」と結ぶ(三余)。水の冷たさに豆腐を掬う赤らんだ掌が見えます(信子)。
・「鰤並び・・」ー臨場感ですね。師走の活気が伝わってきます(樹音)。
・「柿落葉・・」ー庭にちいさいけれど3本の柿の木、落ち葉の赤さは何とも美しく、きれいな葉を選んでは玄関の靴箱の上、玄関の格子戸に挟んだりと、直ぐに枯れてしまうまで楽しみます。実ですか、どうやら渋柿、鳥たちに食べさせています(亜沙弥)。
・「薄情も・・」ー内容が教科書的に正しいが、それが嫌味なく「俳句」成立!見事だ、特選だ!!(幹)。
・「椎の実の・・」ー「椎の実」と「夜寒」の季重なり、「速さかな」とサラリとしたい(三余)。
・「冬木立・・」ー人の便りもない寂しいところでは、噂さえも届かない。あえて聞かぬふりをする強がりがかんじられてしまう(松一)。
・「そぞろ寒・・」ー遺物は思い出の品か。棚の撓みは心理的な撓み。辛い思い出によるそぞろ寒」(純雄)。
・「理科室の・・」ー20番の句「理科室の窓から冬ざれの匂い」と同工だが、こちらは、いささか滑稽味のある「骸骨さん」。初時雨との取り合わせに功がある(恒行)。
・「曇天の・・」ー魚を釣る人でなければ、うまく説明できないだろう。さて晴天と曇天とどちらが食いつきがよいのだろう?(恒行)。
・「ふくら雀・・」ー冬の雀は不思議と米屋の前に集まります。「米」の文字が読めるのか、店の親爺が撒いているのか(剛)。
★閑話休題・・中田美子「天中に春半月と笛の音」(「ユプシロン」NO.5)・・
その中田美子の「あとがき」に、
(前略)初学のころ読んだ詩にはこんな一節があって、最近わりと身に染みる。
人生は生きがたいものなのに
詩がこう たやすく書けるのは
はずかしいことだ。
伊 東柱「たやすく書かれた詩」
とあった。ともあれ一人一句挙げておこう。
少年の手から素直に食べる鹿 岡田由季
不在そしてぶらんこは風によじれ 小林かんな
祈るその前に息吸う冬帽子 仲田陽子
一区画相続となり蜜柑山 中田美子
目夢野うのき「銅吹きの銀杏の色の濃かりけり」↑