岩田暁子第二句集『陽のかけら』(朔出版)、「あとがき」に「本句集には、平成26年から同二十九年夏までの作品を自選して二九八句を収めた」とある。集名に因む句は、
沈黙の春潮へ散る陽のかけら 暁子
だろう。上掲句、沈黙の春潮は少し思わせぶりだが、読みようによっては、東日本大震災の津波の翳が覗えないわけではない。それはたぶん「沈黙の」の措辞がそう思わせる内容を含んでいるからだ。3・11は、季題的には、春の濤であり、春の地震であったのだからそれも詮無し。また海を含めて水にまつわる句、或いは花にまつわる句もなかなか多い。春霞までも含めて水と思えば、
春霞かもめ落ちざる影なして
冬怒涛一羽の鷗加へたし
枯蓮や水に映りし刻の色
寒鯉の鰭動かざる暗き水
ひとところ明るき中に花の寺
などの句が印象に残る。ともあれ、あと少しいくつかの句を以下に挙げておこう。
朝ごとに色足されたる春寒し
エレベーターガール手を上げ赤い羽根
蒼ざめし被爆のマリア冬館
二人乗りしたるふらここ空へ飛ぶ
人は皆小さく眠る枯野かな
岩田暁子(いわた・あきこ) 昭和44年、愛知県生まれ。
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