2017年11月11日土曜日

岩田暁子「白鳥のかうかうと空鳴かせけり」(『陽のかけら』)・・


 
 岩田暁子第二句集『陽のかけら』(朔出版)、「あとがき」に「本句集には、平成26年から同二十九年夏までの作品を自選して二九八句を収めた」とある。集名に因む句は、

   沈黙の春潮へ散る陽のかけら    暁子

だろう。上掲句、沈黙の春潮は少し思わせぶりだが、読みようによっては、東日本大震災の津波の翳が覗えないわけではない。それはたぶん「沈黙の」の措辞がそう思わせる内容を含んでいるからだ。3・11は、季題的には、春の濤であり、春の地震であったのだからそれも詮無し。また海を含めて水にまつわる句、或いは花にまつわる句もなかなか多い。春霞までも含めて水と思えば、

  春霞かもめ落ちざる影なして
  冬怒涛一羽の鷗加へたし
  枯蓮や水に映りし刻の色
  寒鯉の鰭動かざる暗き水
  ひとところ明るき中に花の寺

 などの句が印象に残る。ともあれ、あと少しいくつかの句を以下に挙げておこう。

  朝ごとに色足されたる春寒し
  エレベーターガール手を上げ赤い羽根
  蒼ざめし被爆のマリア冬館
  二人乗りしたるふらここ空へ飛ぶ
  人は皆小さく眠る枯野かな

岩田暁子(いわた・あきこ) 昭和44年、愛知県生まれ。  




  

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