森田智子第5句集『今景』(邑書林)、平成24年からの9年間の作品305句を収載。著者「あとがき」には、
(前略)今まで、歴史の流れの中の自分の居合わせた時代の今に拘って俳句を書いてきましたので「今景」としました。
初学の西東三鬼から、生の証である俳句を学びました。これからも、どのような状況にあっても、生の証を書き続けたいと思います。
とあった。装丁はたぶん、記されてはいないが、邑書林社主の島田牙城だろう。カバー、扉に使われている写真が、カバー=子供のいたずら(武庫の荘・中田公園にて)と扉=真似る大人のいたずら(同・大井戸公園にて)である。これがなかなか良い。武庫之荘は邑書林の所在地だ。装丁は、秘かな社主の遊び心を留めた楽しみかもしれない。ともあれ、愚生好みに偏するが、本集より以下に幾つかの句を挙げておきたい。
不発弾百年生きて草青む 智子
短縮ダイヤルAで呼び出す春の風
震災とテロの間に種を蒔く
囀りを詰めポケットの蓋をする
茂りたる森の奥から鼓笛隊
給食の新米戦後七十年
弾丸よけになるかもしれぬ貼る懐炉
節分の進化してない鬼の面
野遊びに紛れておりし魔女の杖
アクセルとブレーキ並ぶ昭和の日
憲法の日の定位置にごみを出す
刻んでは増やすオクラの星の数
青年の大きな靴と墓参
霊園に立つ紅白の曼珠沙華
コロナ禍のビルからビルへ虹の橋
西日射すビリケンの足エアタッチ
一つだけ鈴の音する露の玉
森田智子(もりた・ともこ)昭和13年、大阪生まれ。
撮影・鈴木純一「合言葉うろ覚えにて秋の蛇」↑
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