2020年9月26日土曜日

豊里友行「誕生も死もこの涙かたつむり」(『宇宙の音符』)・・


 

 豊里友行第3句集『宇宙の音符』(沖縄書房)、本句集には、すべての句、「あとがき」などにも英訳(松本太郎)が付されている。写真家でもあり俳人でもある豊里友行は、その「あとがき」に、

 

  (前略)やはり私は「夢を語りたい。愛を語りたい。基地の島の現実を直視し、それを乗り超えていく創造力の翼を広げ、自己表現をしていきたい。」と謳ったあの頃のままだ。

私にとっての俳句と写真の二足の草鞋は、どちらも欠かすことのできない生きる杖だった。(中略)

俳句は楽しい。

写真は楽しい。

(中略)

私にとって俳句と写真は、より良く生きる糧となる。

俳句の創造力の翼は、ついに宇宙の未知の領域に飛翔する。

私は、沖縄への愛を宇宙のラブレターで奏でるように句集に綴った。


 とあった。ともあれ、集中より愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておきたい。

 ただ、ひとつ気になったことは、句のフレーズがどこかで見たフレーズと重なって読める句が幾つかあったことだ。これは、彼が、誰にも似ることなく一句を佇立させるために、彼の句に、さらなる飛躍を望むならば、捨てなければならない部分だろう。楽しくはなくとも・・・。


   蒲公英の湯船の大地が点火する      友行


   月も踊れ(モーレ)

   花も踊れ(モーレ) 宇宙の音符よ

   月も踊れ(オーレ)


   文庫本天道虫もエキストラ

   とことこ歩いては立夏の手拍子

   終戦はまだよさざなみのまらそん

   島丸ごと宇宙の弦の花ゆうな

      *ゆうな=沖縄口の呼び名でオオハマボウ

   台所ぴかぴか母の孤島です

   あめんぼが踊る超合金の水

   還れない遺品が語る光る風

   

 豊里友行(とよざと・ともゆき) 1976年、沖縄県生まれ。



     芽夢野うのき「不覚にもすすきかるかやくたれたる」↑

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