2020年9月6日日曜日
宮坂静生「木に木魂草に草魂暮の春」(『草魂(くさだま)』)・・・
宮坂静生第13句集『草魂(くさだま)』(角川書店)、著者「あとがき」に、
俳句を続けてほぼ七十年、出会いがすべてであった。近年、多くのかけがえのない人を送り、気が付けば傘寿。しかし、私はいまだなにごとも途上の思いが強い。多分生涯、途上感を持ち続けるのではないか。
俳句とはなにものか。わからない。ただ、掴みどころがない怪物にとり憑かれた思いである。芭蕉は「笈の小文」でそれを「これが為に破られ」といっている。私も俳句だけが残ったことは身に沁みてわかる気がする。(中略)
若い日に読んだ和辻哲郎の青春の書『ゼエレン・キエルケゴオル』は大方忘れた中で、その序にある「最も特殊なものが真に普遍的なものになる」の一言がいまでも頭に残っている。著者とはちがう意味で、すべて一回の出会いが普遍になる。そんな「一回の出会い」を大事にしたいとの思いがいよいよ強い。
とあった。また、書名に因む句は、「那覇四句」の前書のある句の中の、
草を擂りつぶし草魂沖縄忌 静生
であろうが、愚生の心情は、ブログタイトルにした「木に木魂草に草魂暮の春」の句に傾斜する。この句の前ページに「核に核もてする愚考桃の花」の句も置かれているが、やはり、ブログタイトルに挙げた句の方に、愚生は傾斜する。ともあれ、愚生好みになるが、集中より、以下にいくつかの句を挙げておきたい。
瞠(みひら)くは遠くが見えず敗戦日
悼 鳥海むねきー 一月六日
真夜中に鵲(くぐい)の翔(た)つを目のあたり
湘子忌や暗礁(いくり)の怒濤手向けたし
「がんばつぺし」土塁に土塁積みて夏至
化けて出る愉しみ残し朧の世
兜太に教えられ
鳥男(ちんぽこ)はよろしき字なり鳥帰る
生涯に一度柩に入れば春
雨返(あまげし)や木の吐く息が木に纏ふ
雨返ー冬の寒さの戻り
原発の廃炉妖怪かひやぐら
放射能避難区域の熊注意
悼 中村哲氏
冬星宿井戸を掘りては祀りをり
伊丹十三を思い
煤逃げもゲートル巻きもやらず来し
宮坂静生(みやさか・しずお) 1937年、長野県生まれ。
芽夢野うのき「空よりの青き礫を柘榴の実」↑
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