2020年9月1日火曜日

広瀬ちえみ「匂いかぎながらスミレを読んでいる」(「垂人(たると)」38号)・・




 「垂人」38号(編集・発行 中西ひろ美、広瀬ちえみ)、たぶんだが、特集は「広瀬ちえみ句集『雨曜日』へー仲間からの言の葉集」である。執筆者は、ますだかも「雨曜日上梓おめでとうございます」、川村研治「雨曜日に溺れる」、中内火星「どことなく爽やかな雨/『雨曜日』を読んで」、小池舞「ナイスグー」、髙岡粗濫「洋服を着たままプールに飛び込んだ少女」、瀬間文乃「ちえみちゃんあそびましょ!」、中西ひろ美「ぐうぜんの『!』」、坂間恒子「雨曜日十句選」、野口裕「雨曜日拝聴」、松本光雄「広瀬ちえみ句集『雨曜日』を読んで」で、タイトルを見るだけで、それがラブレター尽くしだとわかる。なかでは、松本光雄は句の分析をよくほどこしている。例えば、

  Ⅳ 雨曜日
    土中から出てくるここは朝ですか (115頁)
 朝はどこから 来るかしら
 あの空越えて 雲越えて
 光の国から 来るかしら
            (中略)
 は、一九四六年に朝日新聞が懸賞募集した際の一等選歌で、戦後の希望と成長を象徴するような歌詞と明るいメロディーは、わたし達の世代の耳にもまだ残っている。
 さて、この土中から出て来て、「ここは朝ですか」、と問う主体はだれなのか。それが明確に言えない時代にどうも生きているらしい。

 と述べている。ともあれ、本誌本号より一人一句を挙げておこう。

  梅雨月を撮すと明日らしきもの           中西ひろ美
  ライオンになりそこなつた蟬の殻          ますだかも
  夕顔の双葉に二匹かたつむり             坂間恒子
  母の日や厨好きなる次男坊              川村研治
  上総(かずさ)より上総(かづさ)へわたす麦あらし  鈴木純一
  ヨミガエルことはなけれど蛙鳴く          高橋かづき
  のらぼう菜春を固めに茹で上げて           渡辺信明
  洞窟は涼しく誰か呼んでいる            広瀬ちえみ
  堪え切れないバナナの反り              中内火星
  水ぬるむ友あり来ても来なくても           野口 裕

  

    撮影・鈴木純一「6日アリガアリヲハコンデヰマシタ」↑

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