國清辰也第一句集『1/fゆらぎ』(ふらんす堂)、跋文は矢島渚男。その中に、
秋のいろぬかみそつぼもなかりけり
という句が芭蕉にある。(中略)この「いろ」は秋の色彩と解してもよいが、「物事の表面にあらわれて人に何かを感じさせるもの」という意味として、けはい・兆しの意味としてよいだろう。この秋のけはいをを現代物理学を学んだ國清辰也は周波数の揺らぎとして
万物に1/fゆらぎ秋
と表現した。(1/fはエフ分の1と読む)。果敢な試みと言って良い。この春には
岩盤に楔一列日の永き
とも詠い得た。
とあった。また、著者「あとがき」には、
(前略)俳句に微かなゆらぎをおもいみることがあり、また字面が面白いので、本句集所収の一句、
万物に1/fゆらぎ秋
から採って題名とした。
ともあった。ともあれ、集中より、いくつかの句を以下に挙げておこう。
たましひはふぐりのあたり雪催 辰也
破蓮の水に甍の澄みまさる
繊月のくらきところに円冴ゆる
冬うらら空気を撮りに行くといふ
今生は長き戦後よしぐるるか
秋深し己の耳は見えぬまま
いわし雲平穏な死は仰向けに
人間の皮は飾らず狩び宿
跳箱の中のくらやみ春の昼
水葬の鳥もをるべし小夜時雨
無意識に囲まれてをり立葵
芽夢野うのき「狐のかんざしかかげて呼べり風の鳥」↑
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