2016年3月31日木曜日

白濱一羊「三月の雪や日本に無人の地」(「俳句」4月号)・・・



久しぶりにメッセージ性のある句群に出合った。白濱一羊「戦争つくりかた」12句で、その意味では他の12句作品俳人諸氏を圧倒している。句の出来などという野暮なことは言わなくていい。何しろ、韜晦のきかない「万愚節伏せ字に代はる自主規制」(ここは新かなで「代わる」と書いて、柔らかくしないでほしかったが・・・)。「日本に無人の地」とは、今、読んでいる宮田毬栄『忘れられた詩人の伝記ー父・大木惇夫の軌跡』(中央公論新社)で「父が暮らした浪江町の白木屋旅館周辺や次に住んだ大堀村、そして神鳴の高瀬川河畔にある父の詩碑を見てきたいと思っている。『高瀬川愛吟』を刻んだこの詩碑を未見のまま父は亡くなった」という福島県双葉郡浪江町を思い起こさせる。宮田鞠栄はあるこだわりをもって、ついにその地に行っていないのだ。いかなくてはと思っているその思いを延ばしているときに大震災ばかりか放射能汚染のために立ち入り禁止区域になったのである。
あとひとり双葉郡双葉町には、「鬣」同人にして、愚生よりも若い友人である中里夏彦もまた家と墓を残したまま帰れずにいる。そうした「日本に無人の地」なのである。
白濱一羊の句をくつか挙げておこう。明日は万愚説・・・・。

   大根抜くようように首相を変へれぬか      一羊
   黙すれば戦は近し炬燵猫
   三月の雪や日本に無人の地
   原発へ繋がつてゐる春炬燵
   戦争のはじまつてゐる桜かな



   

5 件のコメント:

  1. 今晩は。白濱一羊と申します。
    この度は拙句を取り上げていただきありがとうございました。
    もし、差し支えなければ「樹氷」誌に掲載させていただきたいのですが、お許しいただけますでしょうか。

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    1. お便り、恐縮に存じます。いつも、一息で書ける範囲のことしか、述べていなくて、不十分なのですが、転載には異存ありません。よろしくお願いいたします。
      大井恒行 拝

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    2. お許しいただき、ありがとうございます。
      お聞きしたいことが一点。
      >(ここは新かなで「代わる」と柔らかくしないでほしかったが・・・)。
      の部分ですが拙句は「代はる」です。「新かなで~」ではなく「口語で~」ということでしょうか。
      ご教授いただければ幸いです。          白濱一羊

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    3. コメントに気付かず失礼しました。小生は仮名遣いに作者の在り様を見る癖がついていまして、言葉足らないところがありました。結論から言うと、歴史的仮名遣いではなく、現代仮名遣いで書いていただいて、猥雑なる現実感を出していただきたかった、という勝手な思い込みです。・・「代はる」に言語秩序というか、美的な部分に寄りかかろうとする心性を感じてしまう小生の悪い癖です。自分が現代仮名遣いで書くと決心をして以来、そう思っているだけなのですが・・・

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    4. 白濱です。
      そうすると「旧かなで代はると柔らかくしないで欲しかった」ということですね。
      ありがとうございました。

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