2016年5月21日土曜日

須原和男「名ばかりの秋風八月十五日」(『五風十雨』)・・・



句集名は、

   戸隠の五風十雨の花野かな       和男

の句から。「あとがき」に、

この言葉も意味は、五日に一度の割合で吹く穏やかな風、十日に一度の割合で降る恵みの雨ということであり、異常な暴風とか、豪雨、豪雪などは含まない。こ程度に風雨のある天候の状態が、日本の風土、特に農耕を主とする地帯にとては望ましいとされる。(中略)
平成二十七年は、師・川崎展宏の七回忌にあたる年であった。それは師の風姿・風貌を追慕し、同時にまた、右二句をはじめとする師の作品群を熟読しなおす機会でもあった。前句集『國原』と同様、本句集『五風十雨』を、再び川崎展宏先生の霊前に献じたい。

とある。右二句とは、

   おでん酒百年もつかこの世紀      展宏
   あらぬ方へ手毬のそれし地球かな

である。師・川崎展宏は「過激なる花鳥諷詠」を自任したそうである。その師に献じられた句集の中から、いくつかを挙げておこう。

   父母未生以前(ぶもみしやういぜん)の枝に初櫻      和男
   黙禱の眼(まなこ)ひらけば春の闇
   琉球の西(いり)も東(あがり)も土用波
   行つたのか来るのか雷を抱ける雲
   会釈して日の短きを言ひあへる
   おとろへは太陽にあり冬櫻
   またしても鳩の割り込む七五三
      奥多摩
   三寒に四温に青みゆく御嶽(みたけ)



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