2017年1月16日月曜日

荒井芳子「酸葉噛む戦後の空も今の空」(『柚の蕾』)・・・




荒井芳子句集『柚の蕾』(文學の森)、集名はかの古沢太穂に評されたという、

  ふくらみてふくらみきりて柚の蕾       芳子

からの命名である。「道標」、「新俳句人連盟」ひとすじらしいから、社会詠に真骨頂があろうかと想像したが、自然詠も率直でいい。それは、

 諸角先生は常々「対象をよく見る」「把握した対象を身体に浸透させてから表白する」「感じる」そして必ず「勉強しなさい」とおっしゃいます。高齢となり少しづつ薄れ行く感性に、きつい坂を登る苦しさを覚えますが、希望を失わず進みたいと思っています(「あとがき」)

と書かれていることが、日々修されているからだろう。そして諸角せつ子の序句は、

   米寿いま柚子の実あまた芳しく      せつ子

ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。

  ひらがなで「へいわ」と書く子流灯会       芳子
  藁塚(にお)棚田このこの島かくれきりしたん
  非武装地帯板門店に萩こぼれ
  七日数えて大屋根の雪痩せにけり
  父親に抱かれて遺影卒業す
  瘤抱いて天空に枯れプラタナス
  冬天へ赤芽ふやしてブルーベリー

荒井芳子、1928年、栃木県生まれ。



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