2017年1月25日水曜日

倉阪鬼一郎「猫に告ぐ深夜の我を尾行せよ」(『猫俳句パラダイス』未収録)・・



「豈」同人の倉阪鬼一郎が、『怖い俳句』『元気が出る俳句』と同様の幻冬舎新書から第三弾として猫句アンソロジー『猫俳句パラダイス』を出した。猫俳句のオンパレードである。とはいえ、倉阪鬼一郎自身の猫句は載っていないので、あえて、いくつかを、以下に『猫パラ』未収録句として紹介しておきたい。

    影ついに猫のかたちとなりて闇      鬼一郎
    白猫を撫でて出勤収容所長
    黒猫の眼に映じたる黒猫や
    月天心点心ひとつ猫の首
    猫ついに虎となるなり秋の暮
    風信や「古城の猫は生きている」

倉阪鬼一郎が猫好きなのは知っていたが、、というのも「豈」の忘年句会などに出席するときなど、いつも黒猫のぬいぐるみを肩に乗せて現れていたからである。それもあたかも自身の分身ででもあるかのような一体感のある所作だった。
本書は第1章「子猫パラダイス」、第2章「猫のからだ」、第3章「さまざまな猫たち」、第5章「猫がいる暮らし」、第6章「猫がいる風景ーキャット・ミュージアム」の構成になっているが、どのページからも自由に読めて、楽しめるように工夫されている。興味を持たれた方は是非ご覧いただきたい。
本ブログでは、膨大な古今の猫の句を紹介できるわけもないので、以下には「豈」同人(元同人含む)の一句を挙げておきたい。


   猫の子のもう猫の目をしてをりぬ        仁平 勝
   猫族ノ猫目ノ銀ヲ懐胎(かいたい)      大井恒行
   四月馬鹿子猫の舌のうまそうな         鳴戸奈菜
        四国見えず猫の舌あかあか           山本敏倖
   房総やどの猫も顔が大きい           川名つぎお
   礼服のこれは猫の毛マイ・ハウス       池田澄子
   大きくて大味の梨 猫は嗅ぐのみ       島 一木
   朧なり白猫ふつと消ゆるなり          秦 夕美
   黒猫に生まれ満月感じたり           長岡裕一郎
   初雷の大通り行くペルシャ猫          妹尾 健
   いのうえの気配なくなり猫の恋         岡村知昭
   天竺の血をひく竈猫なれば           青山茂根
   忘れ雪となづけし猫が見あたらぬ       藤原月彦
   青春は猫いつぴきに暮れにけり        筑紫磐井
   サンタ或いはサタンの裔(すえ)、我は牡猫 高山れおな
   春夏秋冬かきわけかきわけ輝く猫       早瀬恵子 

倉阪鬼一郎(くらさか・きいちろう) 1960年、三重県生まれ。



   

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