2017年1月21日土曜日

田島健一「無限に無垢につづく足し算秋澄む日」(『ただならぬぽ』)・・



田島健一第一句集『ただならぬぽ』(ふらんす堂)。集名は以下の句に因んでいよう。

  ただならぬ海月ぽ光追い抜くぽ       健一

序は石寒太、加藤楸邨の系譜に連なる新派とみて、明瞭に、次のように記されている。

  無意味之真実感合探求
  新感覚非日常派真骨頂
                       石 寒太

現在、句、批評ともに期待されている気鋭の人である。批評意識の先鋭な分だけ、句はいっそう困難な道行を歩まざるを得ない予感がする。それでも、それを手放したら、序にある「新感覚非日常派真骨頂」が泣くことになる。従ってこの困難な道を引き受けるしかないだろう。そして、それは愚生などの手が届かいないところだが、それを田島健一は、確実に引き受けて進むだろう。
ともあれ、以下にいくつかの句を紹介しておこう。

  音楽噴水いま偶然のこどもたち
  戦争をしたがるド派手なサマーセーターだわ
  いちご憲法いちごの幸せな国民
  死も選べるだがトランプを切る裸
  さくら葉桜ネーデルランドのあかるい汽車
  紙で創る世界海月の王も紙
  噴水の奥見つめ奥だらけになる
  次のバスには次のひとびと十一月
  なにもない雪のみなみへつれてゆく
  何か言うまであるようでない冬日

「あとがき」にいう。

 俳句が俳句であることは難しい。
 それは自分が自分であることの難しさと似ている

田島健一、1973年、東京生まれ。


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