2022年6月10日金曜日

栗林浩「玉砕忌風立つさたうきび畑」(『SMALL ISSUE』)・・


  栗林浩第2句集『SMALL ISSUE』(本阿弥書店)、著者「あとがき」に、


  私の第二句集です。(中略)短期間での句集ですので編年体ではなく、モチーフごとに並べ、読みに資するような小文をいれました。しかし、本来、俳句作品は自由に読んで戴くのが筋ですので、どうぞ自由にお読み戴きたく思います。

 句集名は〈着膨れて立売の手に「BIG ISSUE」〉に因みましたが、「BIG 」よりも「SMALL」が相応しいと考え、そういたしました。したがって句集サイズも小さく致しました。


 とある。各章立ての小文・献辞を二つ紹介しておくと、


 一、社会現象  一人の人間、ひとつの生物としての自分という小さな存在にたちかえり、そこから改めて時代の基底と切り結ぶほかはないだろう。/坪内稔典

 六、いのち  すでに生きてきたほうの人生が、つまり下書きであって、もう一つのほうが清書だったらねぇ。/チェーホフ

                   

 である。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。


  「塩」よりも「鹽」の字辛し魚醤(うおひしお)  浩 

  おつぱいのかたちの山の焼かれけり

  十国の七国見えず濃あぢさゐ

  姿見を曲がり損ねし冬の蠅    

  夢道忌や煙の出ないたばこ買ふ

  たましひはしろはなねむのひとよはな

  乗りくるに親子もあらむ茄子の馬

  点と点つなげば生るる大文字

  冷まじや天向くままのデスマスク

  国光(こつこう)とふ滅びしものの堅さかな

  「雪の降る街」に生まれて雪嫌ひ

  今年また柱の増ゆる原爆忌

  右利きは右手を汚し梅を干す

  手の甲は手の平よりも冷たくて

  鳥の恋手札五枚がみなハート

  じやがたらのおはるむらさきじやからんだ

  吐魯番(トルファン)に行きたし水辺には小鳥 


 栗林浩(くりばやし・ひろし) 昭和13年、北海道生まれ。

  


      撮影・鈴木純一「ひとまずは息をととのえ捩の花」↑

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