「現代俳句」5月号(現代俳句協会)、巻頭のエッセイに「直線曲線」がある。本号は杉本青三郎「何度も読むということ」。その後半に、
(前略)さて、何度も読む句集として紹介するのは、次の二つ、一つは田中いすずさんの『ときめかねば』で一九九七年発行。発行時の作者の年齢は七十歳を超えている。もう一つが、大坪重治さんの『直』で発行日は二〇〇四年。これも作者は発行時七十代後半の年齢になっている。二冊とも時間の侵食は夥しいが、その感覚は今でも新しく斬新でさえある。まずは、『ときめかねば』から作品を上げる。
春の雪ものの根元は微熱して
ながいながい助走のはての凩か
白繭にこもる気でいる障子貼り (中略)
続いて『直』の作品を上げる。
銀河から鯨一頭分の冷え
今日を返しに鶯の谷へゆく
きのうより大きな真昼白山茶花 (中略)
二つの句集とも、温故知新の最たるものである。
と述べられている。思えば、愚生が現俳協の青年部役員だった頃、現俳事務局長?だった大坪重治氏には、大変お世話になった。また、田中いすず氏にも、多賀芳子の句会であったか、現俳の句会であったか、その句柄に魅せられていた。すでに30年ほど前のことになる。 他には、第22回現代俳句大賞が川名大(はじめ)に授賞が決定したとあり、中村和弘選考委員長が、
(前略)新興俳句、またこの区分には異論もあろうかとも思うがその実証性は高く評価されるべき、と私は考える。この俳句史観をベースに現代俳句協会の『昭和俳句作品年表』戦前・戦後篇が成立した。現代俳句協会の事業として更に評価されるべきである。
と記している。また、川名大の受賞の言葉のなかで「新たにスタートした第三次『昭和俳句作品年表』の作品収集に力を尽し、受賞に報いたいと思っている」とあった。つまり昭和46年以後、昭和64年までの作品集ということだ。期待したい。ともあれ、以下に、本誌本号から、いくつかの句を挙げておこう。
へなちょこもカバも午前の虹の中 坪内稔典
恋結び濃いもうすいもあやめどき 横須賀洋子
以津真天(いつまで)鳥あやめケ原に影落とす 永瀬十悟
虎落笛アンクル・トムの逃げた川 金子 嵩
はこべらへ重機が爪を入れにけり ふけとしこ
★閑話休題・・森澤程「最終の白鳥ゆきて雨となる」(「ちょっと立ちどまって」2022・4)・・
毎月のハガキによる二人の俳句通信である。以下に一人一句を挙げておこう。
惑星に深き凹凸飛花落花 森澤 程
銅像のチェロに弓なし鳥曇 津髙里永子
撮影・中西ひろ美「回想の蕾ありけり花蜜柑」↑
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