2015年9月21日月曜日

岩岡中正「露けしや空に授かるものばかり」(『相聞』)・・・



句集『相聞』(角川書店)の著者・岩岡中正は露けしの人。露けしの句が目立つ。当然ながら露に関しての句は収録句462句のなかでも最多の季詞ではなかろうか。ざっと数えて約6%、30句近い。それは、たぶん淋しさがもたらしている。「さびしさをあるじなるべし」(芭蕉)とした詩歌の道である。

   秋時雨淋しさは山越えてくる         中正

である。

      三月三日 水俣川雛流し
   わが流離ここにはじまる雛流し

この句は巻尾の、

  水底に海霊(うなだま)の宮雛流す
  一炊の夢に雛を流しけり

の句につながっている。句姿の正しい句群だ。

  水仙に明治は高く香りけり
  その奥の後生の桜見にゆかな
  神の手をこぼれて滝の落つるなり
  花仰ぐ文学にまだ遠くゐて
  歩兵たりしを冬草の青々と

冒頭に露けしの人と言ったので(もっと言えば露けしの俳人格)、最後にそれらのいくつかの句を挙げておきたい。
 
  水音に二三歩行きて露けしや
  夢見しことも忘れて露けしや
  草は露人はことばをこぼしけり
  聖堂は祈りのかたち露けしや
    九月八日~九日 グリーンピア南阿蘇 
  わが身より離るる一語露けしや

  

                 ルリマツリ↑

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