2015年12月7日月曜日

宇田川寛之『六花書林 十周年記念』(六花書林)・・・



六花書林(りっかしょりん)社主・宇田川寛之は詩歌出版物を手掛けるたった一人の出版社である。そして、彼は、かつて若き俳人として「俳句空間」でデビューした。『燿ー「俳句空間」新鋭作家集Ⅱ』(弘栄堂書店)に収載されたときは、すでに俳句休業中、「短歌人」所属だった。正木ゆう子がその解説で述べているように、もっとも若い23歳だった。その後の彼は出版社勤務を経て、たった一人の出版社を起こして十年が経ったのだ。その間の刊行物は巻末の目録によると、短歌関係の本ばかりだ。中にたった3点のみ宮崎斗士『翌朝回路』、『そんな青』と武藤雅治『かみうさぎ』の句集がある。
それと、彼には「子規新報」の130回以上に及ぶ連載「となりの芝生ー短歌の現在」があり、今なお続けられている。
本冊子に寄せられた多くの稿には、丁寧な本づくりに対する敬意が表されている。そして、刊行されたすべての本の装丁は真田幸治(書籍装本設計 真田幸文堂)によるもの、というのも珍しいことだろう。なかでも俳人の宮崎斗士は、次のように記している。

 宇田川氏の本分はその編集スキルもさることながら、やはり本作りに対するひとかたならぬ熱意と誠意であろう。熱意と誠意―この二つ、私は俳句をやる上でも最も大切な要素だと思っている。

最後に22年前、の『燿ー「俳句空間新鋭作家集Ⅱ』に収載されている宇田川寛之・宮崎斗士の句を挙げておこう(思えば、この集には、佐藤清美・五島高資・高山れおな・平田栄一・萩山栄一・正岡豊・水野真由美・守谷茂泰などが収載されていた)。

    スクイズのやうな告白試みる       宇田川寛之
    追想に本音のやうな天気雨
  
    万年鬱と書いて読み方を考える    宮崎斗士   
    解り切って解り切っいて雪景色




                ユズリハの実↑


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