2015年12月30日水曜日

高橋比呂子「蘭奢待ゆきもかえりも吹雪かな」(『つがるからつゆいり』)・・・



高橋比呂子「豈」同人にして「LOTUS」同人。青森市生まれで攝津幸彦と同年。『つがるからつゆいり』(文學の森)は第四句集になる。
最新の「豈」(邑書林発売)58号には、創刊35周年を記念して各同人の代表句10句が掲載されているが、その冒頭の句は、

    夏岬 原体験は球である        比呂子

本句集からも自選句として、代表句にかなり入集されている。2,3句挙げてみよう。

   一日と、三日七日と飛花落花
   ぽすとからとぽすまでの冬銀河
   蘭奢待ゆきもかえりも吹雪かな

愚生の不明にして「蘭奢待」のことはよく知らなかった。広辞苑によると「聖武天皇の時代、中国から渡来したという名香。東大寺正倉院宝物目録には黄熟香とある。『蘭奢待』の字には「東大寺」の3字が隠されているという。別名東大寺」とあった。読みは「らんじゃたい」。
著者「あとがき」には、本句集の表現意図が記されている。

 言葉同士の絡み合い、関係性、言葉のリズム、音韻の響き、意味性、それらとの衝撃。『つがるからつゆいり』は、これまでよりも、言葉の関係性にシフトしてみた。別にこれが新しい方法なわけではなく、これまでもつちかわれてきた方法である。私なりの世界が出はしまいかと願っている。

ともあれ、旺盛な創作欲に敬意を表して、以下にいくつか挙げておこう。

   無数ならもっとながれる芒種かな
   降雪や平均律とはほど遠く
   陸奥湾に風花産卵しつつ消ゆ
   虚空から紐垂れてくるはるの海
   みちのくは釦ならべてかぞえて遠し
   と、ゆすり蚊とゆりうすと
   羅や闇よりも濃くあいにゆく
   紀の国のきぬたかんたんいささかいささか
   
因みに、表紙装画も著者、瀟洒な装丁は三宅政吉。




                 クロガネモチ↑

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