2017年9月16日土曜日

高山れおな「我が汗の月並臭を好(ハオ)と思ふ」(『天の川銀河発電所』より)・・



 佐藤文香編著『天の川銀河発電所』(左右社)、以前少し触れた山田航『桜前線開架宣言』が1970年生まれ以降の短歌版若手の歌人アンソロジーであれば、その姉妹版の1968年以降生まれの現代俳人版アンソロジーである。いろいろ面白く読ませる工夫がなされた本なのだが、正直に言えば、愚生のような年寄りには、活字が小さすぎて、お手上げのところがある(虫メガネ必須)。
 もっとも、若い、他の分野の人たちにも読んでもらいたいということらしいから、それはそれでよしとしよう。佐藤文香のセンス満載の本で、何よりも助かるのは、「読み解き実況」と題した部分は愚生に、親切に句の読み方を示唆してくれている。その実況の対談相手が上田信治、小川軽舟、山田耕司、坂西敦子というのもまた良い。
 ここでは「豈」同人を贔屓して、「読み解き実況」の高山れおな篇「王様の恋と教養と軽薄さ」から、

上田 ぼくはやっぱりれおなさんが一番すごいと思います。圧倒的な才能だと思うね。この水準で書けてる作家が、この集中はもちろん、今の俳句界に何人いるだろうか。言語的才能っていうのは要するに、その人が選んだ言葉がそう配列されると、あるはずのなかった豊饒さが現れるってことでしょ。れおなさんのどの句をとっても、これだけきらびやかだっていうのは、塚本邦雄とか加藤郁乎とかの才能のあり方を思わせるよ。
佐藤 王様です。なのに、持っている教養とかお茶目さみたいなのとか、青春性までをも、ちゃんと手渡してくれる。私はなかでも恋の句がすごく好きで。〈七夕や若く愚かに嗅ぎあへる〉〈失恋や御飯の奥にいなびかり〉。

 もともと、高山れおなは、もっと若い頃には、有季定型の俳句のみを書いて、しかも落ち着いた大人ぶりの句をなし、その頃から、句そのものはしっかりしていた。
 また、「関悦史という多面体」の山田耕司×佐藤文香では、

編集 関さんは俳句に詳しくない人でも分かる感じがしました。
山田 散文の文脈がある。韻文の文脈じゃなくて。飛躍とか切れがわかりにくくないんでしょう。

 とあって、納得。
 あと一人の「豈」同人・中村安伸の句も加えて、幾つかの句を以下に挙げておこう。

  麿、変?             高山れおな
  無能無害の僕らはみんな年鑑に
  げんぱつ は おとな の あそび ぜんゑい も

  黄落や父を刺さずに二十歳過ぐ   中村安伸
  サイレンや鎖骨に百合の咲くやまひ
  雪片の一瞬を全方位より

  人類に空爆のある雑煮かな     関 悦史
  年暮れてわが子のごとく祖母逝かしむ
  倒れゆく体が我や山笑ふ







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