2017年9月7日木曜日

志磨泉「涅槃図にけふの嘆息加へたり」(『アンダンテ』)・・



志磨泉第一句集『アンダンテ』(ふらんす堂)、行方克巳は帯に、

  上手く笑へず上手く怒れず初鏡

泉さんの自画像である/それは、人間関係における/自己表現のむずかしさーー
しかし彼女のうちに備わった/音楽性は その俳句作品に/独自のリズム感をもたらしている

と記している。また懇切な序を西村和子がしたため、句集掉尾の句「白靴や答見つかるまで歩かむ」について以下のように述べている。

 最近注目した作である。白靴は夏の季題であると同時に、まだ汚れていない、くたびれていないものの象徴でもあるだろう。この靴で、一歩一歩これからを歩みつづけるのだが、未解決のものの答が、生きることで見つかるだろうという期待を感じる句だ。
 亡き人にも、愛する者たちにも、問いかけつつ生きて来た作者である。求める答は容易に見出せるものではないが、言葉の力を信じ、俳句と共に歩むうち、いつかその答は見つかるだろう。見つかるにちがいない。
 
 こうした帯文や序文によって幸福ともいえる句集を編み、俳人として旅立つ僥倖を、たぶん真摯に生きるだろう著者の一途さがうかがえる句集と言えよう。
ともあれ、いくつかの句を挙げておこう。

  草いきれこの道もまた行き止まり     泉
  膝抱いてみるほうたるのあらはれさう
  思ひ消つ落葉とことん踏みしだき
  一頁手前に栞春灯
  吾子に買ふ片道切符風光る
  夫涼しアンダルシアの地図拡げ
  校歌斉唱汗も涙も拭はずに
   
 志磨泉(しま・いずみ)昭和43年、和歌山県生まれ。



 

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