2020年1月5日日曜日

秦夕美「凍つるなりアルバムの紐ドアのノブ」(「GA」84号)・・

 


「GA」84号(編集・発行 秦夕美)、新年に合わせて届いたその「あとがき」には、「明けましておめでとうございます」に続いて、

  令和になってからの月日、私にとって大きな出来事が三つあった。一つはパソコンを買い替えたこと。(中略)
 もう一つは長年の念願だった『夕月譜』の出版。昭和末期、藤原月彦さんとの二人誌「巫朱華」に掲載した共同作品だ。年齢的にも今をはずすと無理になるだろうし、昭和末期のものを令和元年に出すことに拘った。赤尾兜子先生の急逝で、俳句の上では孤児になった者同士、なにかをやっていたかったのだろう。こんな時代もあった、ということ。(中略)
 表紙の葉はコリウス。シソ科の植物で、お盆にお嫁さんがもってきたのが花瓶のなかで根を出していた。鉢に植えると大きくなった。

 と記されている。冊子の内容は、いつものことだが、俳句・短歌にエッセイ(蕪村句に関するものは、これは、そのうち一本にまとめられるだろう)。ともあれ、収載作よりいくつかを挙げておこう。

  緑さす五体崩ゆるにまかせたり    夕美
  たつぷりと空気いだけり籐寝椅子
  仄見ゆる黄泉の辻かや葛嵐
  冬うらゝ黄泉へいざなふ潦

  生きるため夢をみてきたそれだけの人生だつたそれだけのこと  
      「ごめんね」と「ありがとう」とをくりかへし令和元年冬の一日
  今生の終はりを見むと半眼のまま坐りゐる籐の揺り椅子







★閑話休題・・・池田澄子「先生忌寒くきっぱり空青く」(「祭演」58号)・・・


 「祭演(Dioniysosの宴)」58号(主催・編集・発行、森須蘭)、「祭演」掲載作家のなかの「豈」同人(元同人含む)つながりで、池田澄子以下、一人一句を紹介しておこう。

  雪螢あれはほんとは我が欠片       池田澄子
  瞬きをふっと追い越す冬の蝶       森須 蘭
  からすうりはたらかないでいきている   川崎果連
  銀杏の実ぶつからないと気がすまない  杉本青三郎
  白く小さく小さく白い鬱と秋       伊東裕起
  長所だけ思いつかない枇杷の花      成宮 颯 


3 件のコメント:

  1. 池田澄子さんの句と成宮颯さんの句、素敵です!特に池田澄子さんの句、上記2句は良いなぁ。雪蛍の句なんかは泣けてきます。知らなかった句です。大井恒行さん有難う!
    いつもいつも感謝です!武藤幹

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  2. お便り有難うございます。今年もよろしくお願いします。大井

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