掲句は、行方克巳『世界みちくさ紀行』(深夜叢書社)からのもの。カメラ好きという行方克巳の写真とエッセイ集である。世界のさまざまな地を訪れての紀行だからどこから読んでもいいようなものだが、あまりに有名な「アウシュビッツ以後、詩を書くことは野蛮である」(アドルノ)の言葉を無定見に思い起したので、ついその地を訪れて書かれた「アウシュビッツの青い花」(ポーランド)の頁を捲ったのだった。うず高く積まれた丸い眼鏡のモノクロの写真を見るだけでも、言葉が無くなる感じがする。でも、愚生は怖いもの見たさにページを繰る。それでも、世界のどこにも行ったことのない愚生には十分衝撃的。
これから、他のページも少し繰ってみよう。
夏帽子とればうつしみの髪あふれ 克巳
生地獄見て来し汗の眼鏡かな
焼却炉晩夏の花をつめこんで
六千ボルトの夏に感電してしまへ
汗かはき義手や息絶えて
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