今日は、「豈」57号の作品掲載があった同人一人一句を掲げます。
次号「豈」(12月刊予定)は、新同人を含めての年鑑風、同人全員「Who'S Who」の予定です。
その町は冬桜にて行き止まる 秋元 倫
此処に居る誰もが居ない世や春月 池田澄子
日章旗乳にて濡らす午睡かな 牛丸敬史
原子力発電所すめろぎも穀雨なか 大井恒行
風に問えカイエの在り処凍てし日も 大橋愛由等
らくらくときみと卵は立っている 大本義幸
トロンボーン吹かれて雨の大晦日 岡村知昭
核の傘いくつひろげて天の川 恩田侑布子
月光に満たされてゐる三輪車 鹿又英一
来てみれば花は満開誰も居らず 神谷 波
乳房
なき
母
凍て
つきる
赤い 月 神山姫余
ビル颪油圧で動く手足かな 川名つぎお
初景色廃墟廃屋廃炉塵 北川美美
日蝕は淫花を消耗して萌ゆる 北野元生
柿食えばどこかで漏れる汚染水 北村虻曳
滴りの国滅びつつ光りけり 倉阪鬼一郎
変名をすれば変身できる魚 小池正博
暗証番号落としてきたり麦の秋 小湊こぎく
段ボール函からの白息無言劇 小山森生
ガラリヤへ日の傾くや青葉潮 五島高資
にんげんの不在あかるし春の水 堺谷真人
からすうり子供110番の家 坂間恒子
月光の手話階段を駆け上がる 杉本青三郎
さねぶとなつめ【樲】短い命と
いう約束 鈴木純一
人界に無限の罠や秋の草 関 悦史
胸中に棲む綿虫の発光す 関根かな
残る雪それは汚れてゐやうとも 妹尾 健
種袋よりすめろぎの寝息かな 高橋修宏
ざくろからほどけてゆきしあんだるしあ 高橋比呂子
死なないものはダリの時計や満月や 津のだとも子
さくら咲くもっと孤独になってゆく 中戸川奈津実
稗史すべて録音しやう囀りも 中村安伸
枯蓮やもはや敵意も友好も 夏木 久
蜘蛛の巣に夕日燃え盡きはせぬか 新山美津代
振り向いても鏡地獄は抜け出せず 萩山栄一
表札の外され船よやうな家 橋本 直
理不尽な死後の恋とも山櫻 秦 夕美
ラ・フランス恋と変とを間違えて 羽村美和子
鬱王に全裸で抱かる椿かな 早瀬恵子
仏像の後ろ空気清浄機 樋口由紀子
惜春の沖を既視(でじゃびゅ)の手漕ぎ舟 福田葉子
伝言は一コマずつの明暗です 藤田踏青
祭礼は明日なり木場の蝉時雨 藤原龍一郎
遠国に子供飢えおる裘(かわごろも) 堀本 吟
担がれてこの世に迷う神男 真矢ひろみ
蝶塚に重なり合える破れ蓮(はちす) 森川麗子
「あんた変わった子だった」と母 水仙花 森須 蘭
人魚はにんぎょジュゴンと云わないで 山上康子
全裸より勝る全裸の鏡餅 山﨑十生
春の鳥あふれつつ啼く悲の器 山村 曠
腑に落ちる椿の音はきるけごーる 山本敏倖
おぼろ夜の不思議な二人石を蹴る わたなべ柊
もみにもむ鳩変身のハンカチーフ 亘 余世夫
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