鍵和田秞子『中村草田男 私の愛誦句鑑賞』(春秋社)、著者「あとがき」によると、
本書は俳誌「未来図」の昭和五十九年五月号から平成七年一月号まで、十余年にわたる連載「中村草田男俳句鑑賞」をまとめたものである。ほぼ九十回ほどになり、採り上げた句は九十六句(一八四~八八頁の五句は、『萬綠』の昭和四十九年六月号および八月号所収)。他に引用句をふくめるとかなりの数になった。
とある。加えて「Ⅱ草田男俳句の世界」に六編の草田男に関する、論とエッセイが収載されている。いずれも師の草田男に対する親愛に満ちた内容である。それでも、
私が主宰誌をもちたいと申し出た時、『萬綠』誌の幹部同人たちからの猛反対を受け、結局私は「萬綠」を退会し、私が手ほどきをした初心者たちとともに新たに「未来図」を創刊。新たな道を踏み出した。その時に初心の人にも判り易くと思い、連載を始めたのが本書にまとめた草田男俳句鑑賞の稿である。
という。
というわけで、本書はどこから読んでも素直に読める。倦むところはない。
ところで、余談だが、愚生は東京に流れてきた21歳のとき、「萬綠」の句会に一度だけ出席したことがある。たしか吉祥寺駅近くの武蔵野公会堂で行われていたと思う。参加者は百人近くはいただろうか。その折り、草田男を遠望した。若かった愚生は、その後も「風」「石楠花」などの句会に一度だけだが、たずね歩いた。どこも大勢の句会で、少人数で、若くても勉強になるような句会はないかと、俳句研究社に電話をしたのが縁で(十数人の句会だが来てもいい、というので)、代々木上原での「俳句評論」の句会に出席する切っ掛けになったのだった。かれこれ46,7年は前のことになってしまった。
思えば、愚生が一番最初に読んだ俳句入門書は、たしか角川文庫の中村草田男「俳句入門」だったのだ。
以下に鍵和田秞子の草田男愛誦句からいくつかをあげる。
冬の水一枝の影も欺かず 草田男
勇気こそ地の塩なれや梅真白
木葉髪文芸永く欺きぬ
浮浪児昼寝す「なんでもいいやい知らねいやい」
読初や大草原と海を恋ひ
0 件のコメント:
コメントを投稿