2017年10月16日月曜日

三丸祥子「秋の日の鳥とりどりや片辺(かたほとり)」(『翼の影』)・・



 三丸祥子第一句集『翼の影』(書肆麒麟)、表紙写真・著者、装幀・山田耕司。栞文は澤好摩に横山康夫。横山康夫は著者について、

 彼女はじつは鳥博士である。植物についても詳しい。それもそのはず、NPO法人希少物研究会の事務局長といふ偉い肩書を持つてゐる。タカの渡りやクマタカの観察などに同行させてもらふと、絶滅危惧種について熱く語る人なのだ。(中略)彼女は飛んでゐる鳥を瞬間的に区別できるらしいし、鳴き声を聴いて鳥を区別ができる。これも驚きである。(中略)野鳥観察といふ長年の鳥との関はりがあつて初めてできることであらう。渡り鳥を何時間も待ち続けるなど、その根気強さは折り紙付きなのである。

と記している。「円錐」大分句会からの俊秀である。また、著者自身も「あとがき」に「愛読書は植物図鑑です」と記し、かつ「大人になってからは野鳥図鑑も友とし、特にタカと親しくしています」とある。従って、句集名についても以下のように記している。

 また春秋に越冬地と繁殖地を行き来するハイクマやサシバ、ハイタカなどは中津市内を一望できる八面山が渡りのコースになっており、空ばかり見上げる日が続きます。当然ながらそれらを詠んだ句が多くなります。句集名の『翼の影』は「雲海に翼の影や試験終ふ」の一句からというより、この句集のあちこちに登場する鳥たちの翼の影なのです。

ともあれ、集中から愚生好みのいくつかの句を挙げておきたい。

   逃げ水の果てより鳶の生まれ出づ    祥子
   デイゴ咲く島より届きたる爆音
   逃げ水に溺れてゐたる雀かな
   空砲の音に影ある枯野かな
   残照の金柑は木に熟れ残り
   罅(ひびり)ある石に水遣る大暑かな
   棄て山や棄て田や葛は花盛り
   水際に秋沙(あいさ)揉まれて潜りけり
   鷹の眼の赤味をまして老いにけり
   からうじて人界にあり大西日
   イーゼルに絵はなく風に色はなし

 三丸祥子(さんまる・さちこ)、1957年大分県中津市生まれ。 



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