「騎」創刊同人が北里病院に折笠美秋を見舞う。90ページ ↑
■本稿は「俳句研究」誌上に昭和六十二年二月号より平成元年十二月号まで、計三十五回に亙って執筆された「北里仰臥滴々より採取したものである。平成二年六月号による追悼特集では、二十六回までをー『死出の衣は』全句ーとして掲出されたが、今回はそれを補完した。
と、また、「呼辭記」(全)には、
■本稿は、俳句同人誌「騎」の第十号より十四号(昭和六十三年三月~平成元年十二月)までに連載された、折笠美秋最終の多行作品群である。
と記されている。岩片仁次「解説にかえて」では、
折笠美秋に、あまり世に知られざるエッセイがある。それは彼自身の解説ともなっている。
〇
なぜ俳句なのか、よくわからない。よくわからない、というより、まったくわからない。
お前は、何故、俳句を書いているのか、という問いと、お前が書いているそれが、何故、俳句、なのか、という問い。
と記している。ブログタイトルに挙げた「銀河系どこもが灯り何処(どこ)もさむし」の句は、林桂「あとがき」によると、
(前略)せめてものデータという意味で、手元の「星座圖」(第四集・早稲田大学俳句研究会編集発行)を加えておく。一九五六(昭和三十一)年発行の年間句集である。折笠は早稲田大学文学部四年で、跋文を書いている。実質折笠が編集したものであろう。印刷人は髙柳重信である。(中略)
折笠美秋は「銀河系」のタイトルで十五句を掲載する。(中略)折笠が消した作品群である。折笠が消した句を採録することが、折笠の名誉に与するかどうか。問題を承知しつつ、今は記録性に就いて、ここに採録する。
とあって、十五句が採録されているなかの句である。また、その「解説にかえて」の中で、岩片仁次は以下のように書いている。
彼が〈ALS〉という難病に囚われ、昭和五十八年、北里大学病院に入院するや、髙柳重信は、彼をなぐさめ、はげませ!と飛報を発した。それは同時に、重信の深い悲嘆の声でもあった。
ともあれ、本集より、以下にいくつかの句を挙げておきたい。
振りむけば氷雪 誰ももういない 美秋
雪明り死者は夢見ることありや
涙をお拭き 明日へ 雪明かりの妻よ
「母」の字に最も近きが「舟」よ月明
海の蝶最後は波に止まりけり
冬の蝶その眼の炎えていたりけり
青空を舞い落つ不覚の雪一ひら
激天や
凍死をこぼし
溺死をこぼし
石上三年
石下は永遠や
霙來る
篝火や
昨日炎えたる
二人あり
柩燃す
その間も
身籠る
鵙よ鵙よ
蝶も
雪も
聲の無ければ
花ならん
鬼と化し
人と化し
止まずの
風と化す
笑くぼして
眠る山河や
汝が死後も
冴えわたる
満月を見き
虎と化さん
折笠美秋(おりかさ・びしゅう)1934~1990、横浜生まれ。
撮影・ブログ読者より ↑
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