渡辺誠一郎第4句集『赫赫(かくかく)』(深夜叢書社)、その「あとがき」に、
この間、、東日本大震災から九年が過ぎた。そこに突如、新しいウイルスが地上に蔓延し始めた。天変地異は常の事だと改めて思う。ただ生き延びるしかない。
私はといえば、あまり代り映えのしない日々が続いている。強いて変わったことといえば、震災への体験を、少しでも内面化に努めるようになったことであろうか。
とあった。従って、集中には、震災、原発など、また、師の佐藤鬼房にまつわる句なども多い。集名に因む句は、次の句であろう。
赫赫(かくかく)と闇に爪掻く老蛍 誠一郎
ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。
地にふれぬための蹴爪や夏の風
晩節の影に寄り来る断腸花
瓦礫失せ一痕として冬の星
冬薔薇聖書にはなき誤植
一枚は地祇のためなり蛇の衣
軍装を今だに解かぬいぼむしり
東日本大震災から7年目
閖上浜(ゆりあげ)の芽吹かぬ木々と芽吹く木と
月の出や疼くは二心房二心室
幾万の汚染袋や霜しずく
枯野原廃炉の朝は杖ついて
渡辺清一郎(わたなべ・せいいちろう) 1950年、塩竈市生まれ。
芽夢野うのき「辛夷の実うからはらからみな喪服」↑
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