藤原暢子第一句集『からだから』(文學の森)、第10回北斗賞受賞とある。序は飯田晴。跋は大塚太夫「アンリ・カルティエ=ブレッソンの言葉」。序の結び近くに飯田晴は、
今井杏太郎が亡くなって八年。
鳥居三朗の急逝から五年。
今井杏太郎、鳥居三朗を見送った私は、藤原暢子旅立ちの第一句集を「魚座」から「雲」につながるひとすじの光として受け取った。
と記している。そして大塚太夫は、写真家でもあるという藤原暢子に、
(前略)そういえば、暢子さんに好きな写真家は誰かと訊いたことはない。しかし、アンリ・カルティエ=ブレッソンのこのエスプリ、精神はわかってもらえるだろう。
「瞬間は永遠につながる」
これもブレッソンの言葉だ。藤原暢子はそこを歩いている。
という。集名にちなむ「からだから」を含む句はいくつかあるが、それに関わる句を挙げていくと、
若竹の揺れ体から音のする 暢子
夏至歩きたがる体をつれてゆく
かさかさと体はなるる夏蒲団
とうすみのつるむ体の数字めく
からだから海あふれだす夏休み
からだから音湧いてくるをどりかな
古巣見る目は体から離れゆく
などである。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。
声あげて神輿は熱になりにけり
新米をおかはりする日三朗忌
火の神のゐない厨を鉦叩
白菊のしづかに音を吸ひとりぬ
神様の息のかかりて初紅葉
秋の日のしみこむ色のつむがるる
木の芽和喰ふ口が言ふ山のこと
ものの芽や山はくすぐつたからうに
春愁の列車は山に来てしまふ
藤原暢子(ふじわら・ようこ) 1978年、鳥取生まれ、岡山育ち。
撮影・鈴木純一「ひとつですが山女の色をおすそわけ」↑
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