渡部ひとみ句集『水飲み場』(創風社出版)、跋文は坪内稔典「五七五の言葉の風景」、その中に、
冬青空ひょこっと鳥の水飲み場
冬の日のカフェに巣箱とオートバイ
雪の窓つま先くっとたてていた
冬の章「マメ科に属す」の三句だが、これら、どれも大好きだ。鮮明な形が快い。
ここまで私が挙げた句は、どれもが私たちの普段の言葉で書かれている。いわゆる俳句らしい言葉とか表現がない。別の言い方をすれば、今を生きている言葉が作る五七五の風景、それがひとみさんの俳句の風景なのだ。
とあった。三句の最初の「冬青空」の句が、集名『水飲み場』に因む句であろう。また、著者「あとがき」の中には、
(前略)俳句グループ「船団」の散在が決まり心細くなりはじめたところでしたが、
幸いにもさやんさんの愛媛新聞カルチャー教室が開かれることになり、まずはここを散在の出発点として、これからも楽しく俳句を作り続けたいと思います。
と心持が記されている。ともあれ、集中より、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
かげふみの一歩が出ない春の夢 ひとみ
春の雲絵本に跳ねる鈴の音
金魚飼うちょっときれいな皿に浮く
太陽を仕舞うお役目夏芝居
詩的睡蓮散文的碧空
月見草ここは鉄鎖置き場です
中秋の名月隣では電話
小春日の真ん中へ置く核家族
ピノキオの関節九個冬の星
海側へふわりと離陸春隣
渡部ひとみ(わたなべ・ひとみ) 1954年、愛媛県生まれ。
撮影・鈴木純一「沈黙の金より銀の睦語り」↑
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