石嶌岳第4句集『非時』(角川書店)、集名に因む句は、
いちにちに非時(ときじく)のあり薄氷 岳
と思ったが、「あとがき」によると、
句集名は、「非時香菓(ときじくのかくのこのみ)」からいただいた。非時香菓は、田道間守(たじままもり)が天皇の命により常世の国から探し求めた実のことである。この田道間守は菓祖として祀られている。また、この言葉から日常と非日常という時間の関係を感じさせてくれる。俳句を詠むことによって、この二つの時間の間を眼差しは往還しながら時を超えていっているもかもしれない。俳句は時を超えていつでもあるものである。
ということらしい。ともあれ、集中より、愚生の好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
陽炎に骨のゆるんできたりけり
睡蓮の黄と白と黄と夕風と
酒よりも餡の渾沌年詰る
切能の急進之出や月涼し
老鶯の強情通す気でありぬ
冬菊の震への蝶におよびたる
野暮用の戻りの秋の暑さかな
花よりも花のごとくに雪ふれり
頭の端の冥(くら)くなりたる蟬時雨
鏡より風吹いてくる五月かな
たまゆらの水の淡海の水は春
晩春に拾うて骨のさくら色
石嶌岳(いしじま・がく) 昭和32年、東京生まれ。
撮影・鈴木純一「秋の蝶ぬくもりしばし掌に受ける」↑
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