2021年11月22日月曜日

佐藤りえ「植物の魂も又重からむ/人の腕一本ほどの重量のポトスライムの鉢抱き起こす」(「九重」1号)・・


  「九重」1号(発行人・佐藤りえ)、挿画・装幀も著者。その編集後記に、


 誌名の「九重(ここのえ)はおもに福島・宮城で販売されている小珠状のお菓子の名称が由来です。茶碗に入れてお湯を注いで飲む、飲み物と食べ物のあわいにあるような、すこし不思議な食物です。

 ごくささやかな個人誌に、創刊号はにぎにぎしく3名のゲストにお越しいただきました。現実の我が家には庭はありませんが、小さな庭にお招きして、ちょっとお茶を飲んでいってもらうような、そんなおもてなしができていたら幸いです。


 とある。ともあれ、一人一句(首)を以下に挙げておこう。


   ステッキで薬玉を突く菊日和     小津夜景

   毬藻らの恋ひそやかに結氷期     笠井亞子

   読みかけの本そのままにまどろんでしたたる文字におぼれてしまう 戸田響子

    忘れたり思い出したりする夕日

   あのくたら人を仕舞っておく箱を記憶と呼んで森は震える     佐藤りえ


★・・佐藤りえ「ぺこぽこと可愛い宇宙湧いてこい」(『ぺこぽこ宇宙(ユニバース)」・・

 佐藤りえ『ぺこぽこ宇宙(ユニバース)』(佐藤りえ・私家版)、副題に、戦火想望俳句ならぬ空想科学俳句集とある。著者紹介のところには、歌人・俳人・造本作歌・・「文藝豆本ぽっぺん堂」の屋号を持ち、手製本作品を発表している、とある。本集も手造りにて瀟洒。ともあれ、以下にいくつかの句を挙げておこう。


  はこべらがはびこるはこびはこぶねに

  ふた漕ぎで火星に届く海賊船(パイレーツ)

  きゆつと鳴くモスラにちよつと萌えにけり

  月はやし一番といふ孤独なれ

    「行け、新しいアダムとイブよ」

  ぎくしやくと掻き抱き合ふ大花野



   撮影・鈴木純一「ヤマユリは羽根があるでしょ飛びなさい」↑

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