2021年11月6日土曜日

赤野四羽「人類みな柿の木にのぼる」(『ホフリ』)・・・


  赤野四羽第3句集『ハフリ』(RANGAI文庫)、著者「あとがき」の結びには、


(前略)さて、「ホフリ」ですが、一つは「屠り」からきています。「屠るもの」「屠られるもの」の関係を通奏低音としています。加えていくつかの背景を重ねてはいるのですが、それは読者にお任せしたいと思います。章立てに用いた「前場」「中入」「後場」は、能曲、それも複式夢幻能の構造から得ています。私は作品に意図を込めますが、作品は意図を超えます。そのせめぎ合いにこそ言葉の凄みが生まれると考えています。自由に暴れる俳句を、自由に楽しんで頂ければ嬉しいです。


 とあった。「ハフリ」はまた「祝」かもしれない。その言葉「ハフリ」に関わる句は、


  天地より屠(ほふ)られて尚海胆(なおうに)である     四羽

  あなたが屠(はふ)りなさい鶫(つぐみ)の血のために  


 である。ともあれ、集中より、いくつかの句を挙げておこう。


  辣韭(らっきょう)・・・しかし月並みな性別

  秋の虹宇宙船なら乗る降りる

  ぽすとあぽかりぷす桜で飲んでます

  千人に一人がぞんび春の風

  人形と人間混じる霞(かすみ)かな

  〇時〇分〇秒元気な虹が生まれたよ

  青羊歯(あおしだ)や旧(ふる)きは神を誤らせ

  小鳥から糸を縒(よ)る業(わざ)失われ

  良心は知性にあらず秋の雨

  愛その他たっぷり笑う冬麗(ふゆうらら)

  たった一人の言語へ白と黄の蝶渦巻く

  雨よ永い永い昼寝ということか


 赤野四羽(あかの・よつば) 1977年、高知県生まれ。



  撮影・芽夢野うのき「まるごとの柘榴なげればさっと青空」↑ 

  

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