2021年11月9日火曜日

久光良一「あの世とこの世 究極の遠距離恋愛だね」(「句抄覚え書き」第38号)・・


 「句抄覚え書き」第38号(周防一夜会)、自由律俳誌らしく、巻頭に荻原井泉水「『層雲の道』よりの抜粋」がある。その一部に、


 (前略)一茶の俳句というものは作品としては、ずいぶん駄作が多い。然し一茶は句を作るということを以て、そこに一つの自由の世界を見出しその世界に住んで、人間的の安心を得ていたということは、そこに「俳句の道」というものがあったからである。俳句の道にあっては「作品」と「人間」ということは離して考えられない。そこに「一行詩」とはおのずから違うところの「俳句」というものがある。今日から大正昭和(初期)のことを回顧してみても、その長い年代の間に深く記憶されていて、印象的に浮かびあがってくるものは、優れた俳句作品というものよりも、それを作ったもの、即ち人間としての作者というものである。 


 と、記されている。ともあれ、一人一句を挙げておこう。


  宿題のない余生で今日も自習です          久光良一

  人づてに褒められ 笑顔になれた日の幸せ     村田ミチヱ

  海ほおずきかんだ音の記憶             山口綾子

  目覚めてもう眠れぬ老いの午前四時         小藤淳子

  「恋」いい響きだ忘れた声見付けた         吉川 聡

  猶予(いざよ)う先の赤ちょうちん点いては消える  吉村勝義

  洗濯物たたむ手が生きています           甲斐信子

  波間によい色みえていちにちのはじまり       加治紀子

  妻がマスクしてちょっぴり若く見えた        石田帝児

  こんな月夜に眠ってなくてよかった         部屋慈音

  忘れたい言葉ふと月の澄む夜           藤井千恵子

  見送る後ろ姿 約束出来ない寂しさ        小村みつ枝

  服で隠してるだけ 皆傷だらけなんだ        松根静枝  

  雑草の葉に残る露に明日の自分を探し見る      山本哲正

  ビワがもぶれ付いている 好きに採ってよ     國本英智郎




  撮影・芽夢野うのき「飛び込んでも死ねませんからユリカモメ」↑

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