「ー俳句空間ー・第4次・『豈』第64号」(豈の会)、第6回攝津幸彦記念賞発表・選考経過。特集は「兜太はこれからどう発展するか?」には外部から宮崎斗士、また通算では三度目となる「豈俳人名鑑」(①入会号数・②主要著書名など・④受賞歴・⑤代表句3句・⑥その他)、「豈」同人著作評では竹岡一郎「加藤知子『たかざれき』」評など。筑紫磐井は「『悪魔の俳句辞典」と「「池田澄子は何処」と「追悼・北川美美」など、。「豈」本誌は事実上年刊になっているが、それでも、それなりに、各人個々のエネルギーが感じられる内容だった。ちなみに特別作品40句は、大井恒行・城貴代美・高山れおな・亘余世夫。
第4次の本号からは、印刷所もふくめ、発行体制の全面改革で、発行人・筑紫磐井にほとんどの負担をかけている。それでも、今後の見通しとしては、超高齢化の進む「豈」が、耕衣流ではないが、衰退のエネルギーを出し続けていけそうである。ともあれ、攝津幸彦記念賞を含め、できるだけ多くの同人の句を以下に、挙げておきたい。
古人K朝臣の歌集に「天海丹 雲之波立 月舟 星之林丹榜隠所見」(七・1068)と詠じあり、現人Qは「夥し天を支へる血の柱」と、幻でない風に葉の騒めきを感じ句業
一系舟の
末
星林
千代風画 夏木 久
初夏や素直な手のひらで触れる なつはづき
春しずかキエフの門に核の雨 大井恒行
目隠しの遊びをせんと梅雨の月 城貴代美
元旦や此処に刺さりて影法師 高山れおな
ぬばたまの夜の茂みの黒うさぎ 亘余世夫
前近代誤倫不参加六名 安男亭翰村
ちちちちと蜥蜴の舌は日を盗み 飯田冬眞
女人微笑むかつて火柱やがて霧 井口時男
あら鷹の日の班零れけむ 池谷洋美
テレビニュースのあぁ熱そうな夏の火事 池田澄子
人流は片蔭を往き花しづめ 打田峨者ん
学歴をブリキの象に言わされる 岡村知昭
瞑(めつむ)るや鼓動は水脈の音に消え 加藤知子
身から出た錆を沈めて燗の酒 鹿又英一
知らぬまに道濡れてゐる十二月八日 神谷 波
身を清め
身を沈め
砂の掟
砂の罠 神山姫余
遮断機をくぐって行った蟻の列 川崎果連
東京の蟬の爆死と歩むなり 川名つぎお
ガリ切りの肩叩かるも振り向かず 北村虻曵
うなじあらばうしろもありぬ夏の闇 倉阪鬼一郎
改札を入って不意に過剰なる 小池正博
死の灰を忘れて咲いたすみれ草 小湊こぎく
乗り降りもなくドア閉まるレノンの忌 五島高資
わたしからわたしが剥がれゆく良夜 堺谷真人
「男性版産休可決」雉子鳴く 坂間恒子
こころてん
突き出る煙
呑みにけり 酒巻英一郎
つきなみの此岸の涯のけぶりたる 佐藤りえ
ゲルニカに音を加える大夕立 杉本青三郎
去年今年棒もとまり木もありぬ 関根かな
暗闇の下人の汗ぞ火をはなつ 妹尾 健
令和3年5月11日
けふ息をひきとりました私の母は 妹尾健太郎
霊長の尾より朽ちゆく花吹雪 高橋修宏
白壁に虹の侵入ゆるさぬなるしすと 高橋比呂子
手花火のふいに横切る老女かな 田中葉月
落ち蝉をうちぶせにしてやるだけ 照井三余
無限道を虚数の列が走っている 冨岡和秀
凍てつくや原発補助の地方町 中島 進
黒幕はやっぱり君か島ふくろう 中村冬美
ひかうきの変態しゆく蛾の過程 橋本 直
炎昼やマリオネットになき背骨 秦 夕美
ばら色という薔薇の色薔薇ばらばら 羽村美和子
押しピンを数えていけば万屋に 樋口由紀子
夢の世に棲みて白髪愛おしむ 福田葉子
放念と声かけられる梅花藻に 藤田踏青
地球儀は小さく青し春立つ日 渕上信子
人類に長わづらひの咳あらん 干場達矢
山笑ふ阿鼻叫喚も多少の縁 眞矢ひろみ
あめんぼう明日はいつも目分量 森須 蘭
堪忍袋など秘めている水中花 山﨑十生
少年は白蓮を頭上に
少女は紅蓮を
スコール 滴るアジア 山村 曠
八月の白から無へと変わる音 山本敏倖
日常や色とりどりの夏マスク わたなべ柊
澁澤栄一(シブサワ)は韓国の札(さつ)草生える 仙川桃生
冷まじと流木で編むベビーベッド 堀本 吟
蛇穴に入るたいがいはすぐに入る 男波弘志
換言すれば換喩はすべて君への嫉妬 大橋愛由等
見ず知らずの妻に出会へり夕ひぐらし 筑紫磐井
★・・第7回攝津幸彦記念賞 募集(正賞1作品)・・・
・内容 未発表作品30句(川柳・自由律・多行句も可)
・締切 令和4年5月末日
・書式 応募は郵便に限り、封筒に「攝津幸彦記念賞応募」と記し、原稿(A4原稿用紙)には、氏名、年齢、住所、電話番号を明記してください(原稿は返却しません)。
・選考委員 筑紫磐井以外は未定
・発表 「豈」65号
・送付先 183-0052 府中市新町2-9-40 大井恒行 宛
撮影・鈴木純一「飛行雲テクノロジーは魂魄と」↑
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